トラック運送業の長時間労働の実態①労働時間の改善基準告示 | 中小企業の知的資産経営と災害対策・BCP

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トラック運送業の長時間労働の実態

①労働時間の改善基準告示

 

トラック運送業は長時間労働の代表選手ですが、はたしてどれくらい長時間なのでしょうか。また、本当に改善はできないのでしょうか。

 

そもそもトラック運送業は、お客様(「発荷主」と言います)から荷物を預かって、届け先(「着荷主」と言います)に届けるサービス業です。

仮に、朝9時に出社して、10時に発荷主のところで荷物を積み込んだとします。着荷主が同一県内など近い場合は夕方までに行って帰ってくることができます。場合によっては複数回往復することも可能でしょう。

問題なのは、中・遠距離の場合です。夕方17時になったからといって、オフィスワーカーのように「定時で帰ります」という訳にはいきません。その時間はまだ行きのあるいは帰りの運行の途上です。

一旦荷物をお預かりした以上、着荷主にお届けしてまた帰ってくるまで、「家に帰る」わけにはいかないのです。トラック運送業は本質的に、労働基準法で定める労働時間の遵守が難しい業種なのです。

 

厚労省では、そのようなトラック運転者の労働時間の改善を図るため「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(「改善基準告示」と呼ばれます)を定めています。36協定で超勤させるにしても、せめてこれくらいまでにしといてねというわけです。改善基準告示の主なポイントは以下のとおりです。

  • 1日の拘束時間は13時間までとする。
  • 休息期間は最低1日当たり8時間とること。
  • 運転時間は1日最大9時間まで。
  • 連続運転は最大4時間まで。
最初の2つは労働時間の制限ですが、後半2つはむしろ安全運転上の制限です。
実際にはこれらに細かい例外規定や条件がいーっぱい付いていて、正しく理解するのはとても大変です。少し詳しく見ていきましょう。
 
1日の拘束時間は13時間までとする。
9時〜18時が定時(拘束時間9時間)の会社員におきかえると、残業を4時間して22時過ぎに退社するという勤務です。1日2日くらいはできそうですが、これが何日も続くとなると私には無理です。
しかもこれには例外があり、「忙しい時は最大16時間までOK」となっています。24時間から16時間を引くと・・・8時間しか残っていません。(これが休息期間)そのなかで帰宅して食事して、必要な家事をして、風呂に入って、朝起きて食事して・・・睡眠時間はどう考えても5時間未満でしょう。
もちろん16時間までOKといっても週何回までとか、1ヶ月の上限を定めるとか、青天井にならないような付帯条件は付いています。それにしても長いですね。
 
休息期間は1日あたり8時間取ること
休息期間とは1日目の終業から次の始業までの時間のことですが、1日目の始業から24時間以内でみることになっています。つまり、拘束時間が16時間を超えたら、休息期間8時間の確保はムリってことになります。拘束時間と休息期間は裏表の関係にあるのです。
 
運転時間は1日最大9時間まで。
これは安全運転の立場からの基準です。ただし2日間の平均でみて良いことになっています。例えばある日に11時間も運転したとしても、翌日が7時間であれば、前後平均9時間となりぎりぎりOKとなります。また、当該日の前日との平均と翌日との平均がありますが、どちらか一方が平均9時間以内となっていれば良しとされています。
1日9時間運転なんて私達だとグッタリしそうですが、そこはプロなんでしょうね。
 
連続運転は最大4時間まで。
これは休憩なして運転し続けられるは4時間までということです。4時間以内に30分以上運転から離脱しなければなりません。必ずしも休憩である必要はなく、荷下しなど運転以外のことをするのならOKです。
これも私などは特に高速道路は2時間連続もムリですが、プロのドライバーはすごいです。
このように、一見労基法よりもだいぶ緩和されているようにも思える改善基準告示ですが、トラック運送業の多くはこれを守れていないのが実態です。次回はトラック運転手の労働実態を見ていきます。