過疎の地方で殺人事件が起きた。
 20年前に殺人事件があったが、
 それ以来の殺人事件と地元紙は言う

 保険外交員の女性が自宅で殺害された。
 無断欠勤で連絡がつかない会社は長女に連絡した。
 駆けつけた長女と会社の人が遺体を発見した。

 地方に住んでいると、
 殺人事件はニュースで知るだけであり、
 身近で起きるのことは滅多にない。
 
 滅多にない身近な場所での殺人事件のニュースに、
 自分の身内が被害者であり加害者であるかのような、
 錯覚さえ覚えるのが地方で起きた殺人事件だ。

 
 殺人事件があったのは三重県熊野市である。
 人口2万前後の地方都市であり全国有数の過疎地で、
 保険外交員の女性殺害事件は起きた。

 現場の写真で家の場所と同時に、
 付近の地理が頭に浮かび。
 近くに住む知人の顔も浮かぶ身近な場所である。

 テレビのニュースで知り驚き、
 地元紙を開いて事件を確かめるのは、
 寂しいが、事件を知らなかった。

 野次馬根性に揺り動かされ、
 現場確認のために車に走らせるが、
 警察の立ち入り禁止のテープがあるだけだった。

 自分の地理的記憶の正確さを確認して、
 地元の人間としての責任を果たしたような、
 満足もまた寂しいものである。

 犯人は娘の恋人だった。
 恋人と呼べるかどうかは知る由もないが、
 19歳の三女の交際相手で、18歳の少年であった。

 隣町に住む少年は犯行を認めたが、
 三女の事件への直接的な関与がないようで、
 それがせめてもの救いだと思う地元民である。

 直接的な関与と言うのは、
 自分の母親を金目当てで殺すような少年と、
 付き合う事が間接的な関与と思うからだ。

 強盗殺人の疑いで逮捕された少年は、
 「金を奪うためにで殺した」と、
 供述しているらしい。

 単なる強盗殺人と思えない猟奇さを感じるのは、
 殺害方法の残忍さであり、
 殺害後の隠蔽工作などである。

 鉄アレイで何度も殴打し、
 刃物で首を何度も刺して、
 殺害後に約10万円を奪ったという。

 この地方で起きた20年ぶり殺人事件だと地元紙は報じている。
 事件現場となった集落は、心なしか息を潜めている感じだが、
 過疎の町の静けさや、昼でも人の気配のないのは普通のことだ。

 この地方でも振り込め詐欺の被害も幾つもあると聞く。
 全国規模の事件は都会で発生し、
 短時間に地方へ波及している。

 地方を田舎といっていた時代は終わったのかもしれない。
 地方と都会の違いの一つに、詐欺事件や殺人事件などとの、
 無縁さがあるが、そんな時代は終わったかもしれない。

 国道沿いにはコンビ二があり、
 パチンコ屋には韓流ドラマの幟がはためき、
 テレビCMで御馴染みのチェーン店が出現する。

 それでも、殺人事件が起きたのは20年ぶりだから、
 コンビニが目立とうと、ツタヤがあろうと、
 韓国ドラマの幟がはためこうと田舎は長閑には違いない。 

 テレビでは里地里山の保存活動が報じられている。
 里地里山の保存と同時に保存したいのが、
 殺人事件など怒りえない田舎的人情だ。