今日はひさしぶりに本の話を!!
本、とはいえ……集英社コバルト文庫です♪
ええ、わたし、ラノベと漫画しか読みませんもの☆(歴史小説や歴史関連書籍はわたしにとってすべてラノベ扱いである←)
しかも、古い!! 「昭和61年3月15日 第1刷発行」。
歴史ファンタジー ヤマトタケル
作者は氷室冴子さん!!
平安時代好き女子の定番・氷室さんの『なんて素敵にジャパネスク』も、やっぱり好きで集めていたけど、さすがに大人になる途中で(?)どっかにいってしまった。でも、この本だけは、もうかれこれ30年近く、後生大事に持っていることになるわけです。
そう、この一冊には……「コバルト小説、どうせ子供が読む少女小説でしょ?」とばかりに、ナメちゃイケナイ魅力があるんです☆
この本と出会ったのは中学生にあがったころ(と記憶)。
いわゆる「ヤマトタケル伝説」を、建(タケル)本人と、彼を囲む人々が一人ずつ出てきて、独白形式で語っていくお話です。これでヤマトタケルのお話を知りました。
なんといってもこの本の素敵なところは……
そのことば。美しい漢字がもつ魔力。
妖艶なカラーイラストを散りばめた、真っ白で厚めのコート紙の、コバルト文庫なりではありますが美しい姿。
中はこんな感じ。
おとなっぽいでしょ?(*^▽^*)
あのとき、わたしにとって、美夜受は初めて、熱い血をもつ、艶(なよよ)かな、愛(いと)しい姫になった。
ひとは瞬(またた)きする間にも、目交(まぐわ)うのか。魂と魂で。
[52頁、( )はルビ]
あわわ、「まぐわう」とかあるし!!((((((ノ゚⊿゚)ノ
こちらは、弟橘姫が建やみなを救うため入水する場面の回想。
弟橘姫はふっくらと咲(え)んで、海の中に入って行った。海神の生贄(いけにえ)となって怒りを鎮(しず)めるために。制(と)めるまもなく……。
嗟々(ああ)。
弟橘姫の歌声が聞こえる。
波のまにまに消えていった姫は、わたしに生きてあれと歌った。倭へ翔(か)けろ、と。
燃ゆる火の 火中(ほなか)に立ちて
わが名を 問ひし君はも
いざ 生(い)かめ 焰(ほむら)のごと
汝(な)が 見(み)が欲(ほ)し国は 西つかた
いざ 翔けめ 白鳥(しぐい)のごと
その 倭 [177頁]
あ、しかもいま気づいたのですが、ちゃんと拡張新字体(パソコンなどで出てくる簡略文字のこと。「焰」は拡張新字体だと「焔」)ではなく正字体を使ってる!! だから小難しいだけじゃなく、見た目も美しいんだ。←すみません、これは細かい話です
(細かいところはいいとして、)使われていることば・漢字に圧倒される。ヤマトタケルで知った字がいくつもあった。「咲う」を「わらう」と読むのも(武井咲ちゃんもだからすぐ読めましたよ☆)。「嗤う」もまた「わらう」であることを。そのニュアンスの違いも。
目にとらえた漢字の形そのものがイメージを喚起して、はっきりとは解らないなりに和語が心に響いて不思議と意味をなしてくるの。
ちょっと似たような雰囲気を、日夏耿之介の翻訳「サロメ」に感じましたよ♪
「そなたの公主(むすめ)はほんに怪異(けし)い女子(おなご)ぢゃ。」
「今宵(こよひ)のあの撒羅米公主(サロメひめ)の嬋娟(あてやか)さはなう!」
漢字とやまとことばの出逢い。美しいですよね。
いやしかし、こんなの中学生になったばかりのガキにはむずかしいのでは……?
いやいや、これこそ、感受性豊かな子どものころに出会っておいてとてもよかった って思います。
氷室さんも、まだ小さい(若い)少女たちに、こういう体験をしてもらいたかったんじゃないかなって感じる。コバルトにあるまじき(?)思いっきり背伸びした妖艶なイラストも、まだ幼かった自分の体験を手伝ってくれましたし。ほんとに、この出会いには感謝します。
それに、お話自体も、なかなか屈折していて面白いんです。
心の底では建のことを思いながら、突き放さずにはいられず苦悩する父・大王。
建に仕えながら、実は生まれながらに間諜として大王から派遣されていて板挟みに苦しむ七掬脛。
討たねばならない出雲建との友情、そして己の卑劣さに慟哭する建。
建を慕い愛して苦しむ(そう、いまでいうBL的展開! 「唇を吸う」シーンもある)部下の武比古や弟彦。
そう、なぜだかみんな苦しいの。
子どもには解らないことだらけだったのですが、とにかくその雰囲気にドキドキし、あこがれましたねぇ。
たぶんこの本、死ぬまで持ってるんだろうなぁ、と思います。