前回に引き続き、天をそろえた散らし書きでないスタイル。字粒大きめ。


10これやこの

       こ    ゆ    か

これや故の遊くも可へ

 る      かれ      し

流もわ可連ては志る

    ら    も

もし羅ぬ裳あふ

  か      き

さ可のせ支



10 これやこの 行くも帰るも わかれては しるもしらぬも 逢坂の関 
                                       蝉丸



訳:これがまあ、(京から東国へ)行く人も(東国から京へ)帰る人も、出逢っては別れして、(お互いに)知っている人も知らない人も、また(ここで)出逢うという坂の関だなあ。


メモ:作者は蝉丸(せみまる)。平安前期の伝説的歌人。この歌は、蝉丸が逢坂の関に庵をつくって行き交う人々を見て詠んだものと、『後撰集』の詞書にいう。ちなみに逢坂は近江と山城の境で、大阪のことではない。

蝉丸に関しては、出自や生没年など一切が不詳、実像は明らかではない。『今昔物語集』では、逢坂山に住む盲人で、敦実親王(宇多天皇皇子)の雑色であった。琵琶・和歌をよくし、源博雅に秘曲を伝授したという。鴨長明『無名抄』では、出家前の遍昭が和琴を習いに逢坂山へ通ったという。また『平家物語』では「延喜(醍醐天皇)第四の王子」となっており、謡曲「蝉丸」に発展した。


この謡曲「蝉丸」は、盲目ゆえに出家させられ逢坂山に捨てられた醍醐天皇皇子の蝉丸のもとに、狂乱して宮中を逐われた姉宮・逆髪が訪れるお話です。逆髪は、名があらわすとおり、髪が逆立つという異常を背負った身、ふたりは不運を嘆き合います。

この話、なんかの小説で読んだと思うんだけど、なんなのか思い出せなくて……澁澤龍彦あたりだったかな~と思ったけどちがうみたい?

なんだったんだろう??