三戦立ちでの突きの稽古 | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 土曜日の稽古の話の続きです。また「三戦立ち(さんちんだち)」をベースにした稽古がテーマになりますが、今度は「突き」が絡みます


 そして今回も、その場稽古ではなく、移動稽古として行ないました。


 「三戦立ち」の場合、左右いずれかから前方になっている関係で、その場稽古の場合、突くたびに「順突き(じゅんづき)」と「逆突き(ぎゃくづき)」が交互になっているような状態になります。基本として行なう場合、その動作を身体染み込ませるためには同じことの繰り返しが望ましいので、「形(かた)」として行なわれる「三戦(さんちん)」の動作通り、「順突き」のパターンで行なうことにしました。


 ちなみに、「三戦」を基本であり極意として稽古する那覇手系の流派の場合、「逆突き」のパターンで行ないますが、千唐流の場合は「順突き」のパターンで行ないます。他流に比べて挙動数も多く、演武時間も長く、しっかりやれば最低5分ほどかかります。これを初学者に課するのは難しいので、その前段階として他の鍛錬形を稽古し、三段以上で「三戦」を稽古します。


三戦立ちによる突き  今回の稽古ではそこで行なわれる「突き」を意識して行なったわけですが、左にそのイメージのイラストをアップしました。


 その場稽古ではない分、一昨日お話しした運足の部分にも留意しなければならず、その場稽古に比べると難易度が上がります。


 「突き」自体も、「三戦」を意識したものですから、素早く突くというよりも、呼吸法を意識した内容になり、しっかり絞るような感じで行ないます。


 その際、どうしても呼吸が早くなったり、呼吸の意識無く早く突こうとする人がいます。


 でも、ここではあえて「三戦立ち」による移動突きとして行なうわけであり、「三戦」のイメージでという前提がありますので、下肢の締めと共に「ハラ」の意識、上肢の絞りなども意識してもらわなければなりません。


 また、土台となる立ち方も同様で、この日の最初に稽古したことをきちんと思い出してもらい、その上に「突き」を行なう、という意識で稽古してもらわなければなりません。


 当然、身体の中心軸のブレや、足の居つきがあっては困ります。この点はしっかり注視し、必要に応じて逐次アドバイスしました。


 ただ、一つ注意すると他が疎かになるのは常であり、今回も同様でした。特に全身の身体操作と深く関わる運足の点については、どうしても中心軸のブレや居つきという前述のチェックポイントの部分が再度気になることになり、「突き」以外の箇所にも気を配ることになりました。


肘の可動域












 ところで、その「突き」ですが、前述したように絞るような意識で行ないました。


 その際、意識してもらったのは肘の可動域との関係です。


 上のイラストに屈曲と回旋が示してありますが、今回特に意識してもらったのは後者のほうです。前腕がどれくらい回旋するかということですが、当然そこには上腕の動きが加味されることはありません


 しかし、身体操作の意識が不十分であれば、前腕の回旋と上腕の動きがきちんとコントロールされず、結果として上肢の動きそのものが曖昧なものになってしまいます。上腕の動きに関しては、脇の締めという部分で意識させるのが武術の一般的なアドバイスになりますが、そういう言葉でのアドバイスがあっても、それを実践する側にしっかりした身体操作の意識がなければ意味を成しません。


 その際、前腕の絞りという部分に意識が行きすぎると、絞ったつもりで動かしことが仇になり、結果的に逆の効果が生じることがあります。


 その様子は突いた時の拳の甲の角度を見ていれば分かりますが、基本的には床と水平かほんの少し小指側が下がっている程度が望ましくなります。


 ところが、上肢を締めようという意識だけが先行すると、小指側が上がってしまうような状態になるケースがあります。これでは上腕もその状態に引っ張られるような感じになり、結果的に脇の締めが不十分になります。


 ほんのちょっとしたことですが、その違いが反作用に対する耐性にどう影響するかを体験してもらいました。結果は明らかで、中にはその反作用が肩関節に響いた、ということを言う人もいました。


三戦 絞り突き





























 みんなが一斉に汗をかいたのが上のイラストに示した「絞り突き(しぼりづき)」のところでした。


 これも「三戦」の中で行なう動作であり、他流では見られない動きです。極限まで呼気を絞り出す感じの動作ですが、脇の締めがしっかりすぎるほど実感できます


 これは「形」とした単独で行なっても効果的なのですが、更に締めの効果をアップしようと、あえてペアを組み、移動稽古の中でこれを行ないました。


 上のイラストをご覧いただければお分かりの様に、「絞り突き」というのは最初に突いたところからやや斜め下方に上肢を下げる動作があります。


 ここを活用し、前腕を接触したまま両者揃ってこの動作をしてもらいました。脇の締めと同時に、身体の中心軸の意識がきちんとできていないと崩れてしまいますが、そうならないようようにと体重を移動するというトリックを行なう人もいました。


 でも、それは正しい状態ではないので、あくまでも中心軸のキープにより崩れを防ぐように指示しました。


 そうすると、これまで意識していなかった部位まで意識することになり、それが一気に汗が噴き出した理由です。最近○○トレーニングといった類を取り入れて稽古しているところもあるようですが、きちんと「形」を見直し、稽古の方法に工夫を加えれば、武術は身体のパフォーマンスを引き出す知恵の宝庫であることに気付きます。


 このブログでも、「形」は武技の伝承と共に武術体作りに欠かせない存在、ということを繰り返し説いてきていますが、今回の稽古で改めて理解してもらったものと思います。今年もそのような話と稽古を行なっていきたいと思います。






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