基本で培うべき空手の身体意識 Ⅱ(突き編) | 中山隆嗣の「活殺自在」

中山隆嗣の「活殺自在」

武道と癒しを中心に、生き方、日々のことを綴ります。

 今日はまた、基本の話になります。


 先日は「立ち方」をテーマに綴りましたが、「形(かた)」や組手で多用される技に「突き」があります。主要な武技ですので、それがきちんとできていなければ、相手を倒せる武技にはなりません。そこで今回は、「突き」にスポットを当て、しっかりした武術の技にする為のコツをお話ししたいと思います。


正拳の握り






 その際、まず意識しなければならないのは、相手に実際に接触する「正拳(せいけん)」の状態です。


 このブログにアクセスしてくる方の検索ワードを確認すると、「正拳」の握り方に悩んでいる方が多いようです。その具体的な内容は分かりませんが、これまでの指導経験からある程度の察しはつきます。


 基本的な内容はイラストに示してありますが、まず親指を除く4指がきちんと握り込むことが必要ですが、ここで拳の芯を作れているかどうかが大切です。きちんとした「正拳」になっていない人の様子を見ていると、この点に不備があるケースを散見します。


 もちろん、最初から強く握っているようでは実際の戦いでは後れを取ることになりますので、用法としては瞬間的に前述の内容で作れるかどうかが大切です。それを基本稽古の時から身体に覚え込ませるべく拳を握るわけですが、単に早く突こうということだけに終始していては、武技に必要な「正拳」にはなりません


 また、強い「正拳」の条件としては、親指と小指の締めがあります。この点もいい加減になっているケースをよく見かけ、これでは相手を倒す要件を満たしているとは言えません。親指・小指のコントロールは、自律神経の働きにも関係していると言われ、手と足とでは逆になりますが、いずれもきちんと意識すべきところです。ちなみに、手の小指と足の親指が交感神経、手の親指と足の小指が副交感神経になります。


突きの直進性




































 今度は「突き」のコースについてのお話です。


 効く「突き」、効かない「突き」の相違点として、動作の質が関係することがあり、その一つが前述のコースなのです。


 上のイラストは「逆突き(ぎゃくづき)」で示してありますが、多用される「直突き(ちょくづき)」の場合はいずれにも共通するポイントになるののでアップしました。


 ここで意識しなければならないことは、その直進性にあります。


 イラストからもお分かりの様に、正しい「突き」には脇や肘の開きがありません。これが「直突き」に要求される「突き」の直進性であり、大切なポイントになります。


 もっとも、「突き」そのものにも色々な種類があり、例えば「回し突き(まわしづき)」、「裏突き(うらづき)」、「鉤突き(かぎづき)」などはこのようなコースにはなりません。


 でも、ここでは最も多用される「直突き」の場合の基本的なポイントとして話を進めます。


 初学者によく見られる良くないケースが、脇や肘が開いている「突き」であり、これではせっかくのパワーを、開いている部分で緩衝してしまい、本来発揮されるべきレベルが期待できないことになります。武技は全身の連動から発せられるパワーが前提になりますが、身体操作の点でパワーロスがあれば、技の質自体が筋力に頼ることになり、本来期待する内容にはなりません。


 たとえ上肢による武技であっても、下半身から湧き出たパワーが源であり、それを減じるような身体操作があってはならないのです。武術として稽古する場合、基本や「形」で細かな動作にまでうるさく注意される理由はここにあり、この認識の有無が今後のレベルアップに大きく関係するのです。


肘の可動域












 この時、身体の仕組みとして理解しておかなければならないことに、肘関節の可動域があります。多少の個人差はあるでしょうが、一般的には上のイラストのようになっています。


 この知識を前提に、正しい「突き」の為の身体操作を考えなければなりませんが、肘関節の動きには伸展・屈曲・回旋があります。これらの動作をパワーロスを防ぐ目的で淀みなく活用しなければなりませんが、それを「突き」の直進性のイラストを元にお話ししましょう。


 空手道の「直突き」は回旋が特徴的ですが、どのタイミングでそれを意識するかが大切です。時々、空手関係の本の中ではピストルの弾丸の直進性の条件として回転しながら飛んでいることを理由に挙げ、「突き」のスタート時から回旋を始めるかのように書かれたものがありますが、弾丸と上肢とではまったく異なります


 また、弾丸の回転は、そのまま貫通力にも関係することになりますが、それは回転力が威力にそのまま加算されるからです。この点は私も同感であり、だからこそどのタイミングで拳を回旋させるかを意識するわけです。


 ここで認識しなければならないのが、前述の可動域の問題なのですが、「突き」のスタート時から回旋させていたのでは、当たる瞬間にはほとんど回旋によるパワーアップは期待できない状態になっています。


 ですから、「突き」の途中までは脇を締めた状態での肘の伸展を活用し、なるべく当たる直前で拳の回旋を行なうように稽古することが大切です。


 それを可能にするのは肘関節の構造と、それを意識した身体操作によりますが、その時に必要な脇の締めなどは、冒頭でお話しした小指の締めが大きく関係することになります。


 このようなところの関係性については、拙著「だから、空手は強い!」(BABジャパン)に詳しく記していますので、ご興味のある方はご一読ください。


 「突き」は武術としての空手道を意識する時に大切な技になりますので、本来はもっとろいろいろ書きたいところですが、ブログという性質上、この辺りで切り上げさせていただくことをご了承ください。


 機会があれば、また同様のテーマで書きたいと思っています。






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