豊洲の消えた盛り土についての都庁の役人の態度を見ていて、薬害エイズ事件の時の厚生省薬務局のことを思い出した。当時非加熱製剤の使用によって多くの血友病患者がエイズに感染させられ、亡くなった事件である。


厚生大臣に就任した直後、私は薬害エイズについて調査しようと薬務局に当時の感染の経緯が分かる資料の提出を求めたが、「ありません」とは言わずに「見つかりません」との返事。資料があった時の逃げ道を用意しているのだ。そこで私は事件発生当時からの関係する役人や学者を全てリストアップし、調査担当者が面接して私が作った質問項目に答えてもらい、回答をそのまま公開することにした。


調査が始まると間もなく、薬務局長から当時の資料が見つかりましたと報告があった。隠し切れないと判断したのであろう。その資料には非加熱製剤を使用した患者さんが次々とエイズに感染し、発症したことが細かく記述されていた。


厚生省、ひいては国として患者さんに謝罪し、患者さんの求めていた和解に応じ、関係者の行政処分を行った。その後、東京地検の捜査が入り、製薬メーカの幹部と担当した厚生官僚が逮捕され、有罪となった。その製薬メーカの社長は元厚生省薬務局長であった。


豊洲の問題でも当時担当した官僚や知事部局の政治家が知らないということは考えられない。都庁の官僚は組織を守るために口をつぐんでいるのだ。小池都知事がどこまで真相を解明し、都政改革ができるのか、期待を込めて見守っている。