8月の7日と8日に鹿児島県の川内原発に出かけ、鹿児島市といちき串木野市で講演会などに参加する予定。その準備を兼ねて川内原発に関する原子力規制委員会の審査書をチェックしている。


  7月23日の私のブログでも述べたが、川内原発が新規制基準に合格したような報道は全く事実と違うことがはっきりした。今回、原子力規制委員会が公表した審査書はまだ「案」。九州電力が昨年7月8日に提出し、その後2度にわたって大幅な補正がされた「設置変更許可」に対する審査書案。今後のパブリックコメントなどを経て承認されれば「設置変更許可」に関する正式な審査書となる。


  しかし川内原発の審査はそれで終わるわけではない。次に「工事計画許可」の審査がある。工事計画許可も昨年7月8日に提出されているが、設置変更許可の補正に合わせて大幅な補正が必要となる。審査手続きはさらに「保安規定認可」「起動前検査」「起動後審査」と続く。とても1,2か月で終わるとは考えられない。


  今回の審査書案についても多くの問題がある。原子力市民委員会などの専門家による検討が始まっており、パブリックコメントが出されるはずだ。


  私がチェックした中では、Ⅳ-5「大規模な自然災害または故意による大型航空機の衝突その他テロリズムへの対応(重大事故等防止技術能力基準2.1関係)」の体制整備が全く話になっていない。


  新規制基準では新たに意図的な航空機衝突や、テロへの対応を新設した。今回の審査書案では「重大事故対応要員36名を含む常時52名確保」「外部からの支援体制」との記述があるが、具体的には他の原子力事業者等への応援要請が書かれている程度。9・11の様な故意による大型航空機の衝突や、原発を狙ったテロリズムに電力会社だけで対応できるはずがない。

  

  福島原発事故でも、自衛隊に出動を求めた。自衛隊は防衛出動、治安出動、災害出動については法律に定められ、装備を持ち訓練もしている。しかし、福島原発事故の様な原発の過酷事故に自衛隊で対応する事を予定した法律はなく、そのための装備も持たず、原発事故に備えた高度の訓練はしていない。自衛隊に原発防御の役割を与えるのならそのための法整備が必要だ。


  最近、安倍総理が九電首脳に会い、川内原発の再稼働を約束したという報道があった。新規制基準に盛り込まれたテロ対応の責任まで電力会社と規制委員会に丸投げし、ひたすら電力業界の意に沿って再稼働を急ごうとしている安倍総理に、総理としての責任感があるのだろうか。