悪霊との戦い・・・その4 | 【 下塚 誠 ~神の選択~ 】

【 下塚 誠 ~神の選択~ 】

俳優、下塚 誠の言葉。

 何だ!、とバックミラーを見ると、わし掴みの白い手、風になびく長い黒髪、白い死に装束の女がへばり着いて


いました。咄嗟のことで、誰からかは分かりませんが、目を見るな、というテレパシーが聞こえ、歯をむき出しに


した口、尖った鼻、白い三角布は確認しましたが、目は見ませんでした。焦った私は、S君の肩を掴み、「後ろ見


ろ!」、と喚きました。Sは金縛りにあっていて、顔は青ざめ微動だにしません。車の速度は100キロを超え、


トンネルを抜け、崖っぷちの急カーブを必死でハンドル操作だけで疾走し、南無阿弥陀仏だの法蓮華教だの


払いたまえ清めたまえだの、アーメンだの、神様助けてとか、知っている限りの救いの言葉を大声で唱えました


。何が効いたのか分かりませんが、女は離れました。金縛りも解け、ブレーキを掛け停車しました。私もSも


放心状態で、長い沈黙がありました。15分程すると、後続していた二台の車が追い越して行きました。


我に返り、私はSを怒鳴りつける様に問いました。「観たのかよ!」。Sも金縛りは解けている様なのですが、


真っ青の顔から滴り落ちる冷たい汗も拭わず、小刻みに震えていて、答えません。私はSの肩を揺すり、何度も


同じ問いを怒鳴りつけました。Sは小声で、「観た・・・」、と答えましたが、それ以上何も喋りません。無言のまま


、ただひたすらに下田に向かいました。暫くすると、「わー!」、とSが喚いたので、びっくりして急ブレーキをか


け停車しました。何事かと問うと、Sは早口で説明しました。テレビの心霊スポット特集で、あのトンネルが取り上げられて


いたのを思い出したと言うのです。その番組で、多くのドライバーが私達と同じ体験をしたり、事故死しているのは、トンネル内でバイクの青年がトラックに撥ねられ死に、


その一周忌に自転車べで供養に来た母親が同じ場所で車に轢かれ死んだ、その悲劇の原因は400年も前に


死んだ女の霊が怨霊となっているからだと、霊能者が語っていた事を思い出したというのです。それを聞き、


バイクと自転車のライトがフラッシュバックして、鳥肌がたちました。その夜、とても野宿する気になれず、


宿を探しました。午後11時を過ぎていたのに、幸運にもビジネスホテルの一室が空いていてチェックインできました。部屋に仏像のポスターが貼ってあり、恐怖に凍て付いた心が解けました。Sは無神論者でしたが、その事件以来、多くの護符を身につける様になりました。将来、この体験を世に明かそうと二人で誓ったのですが、このブログとなってしまいました。