夫がバンジーしたときの話1 の続き
夫は家事も料理も完璧にこなす母親を尊敬していた
おふくろがあんな訳のわかんない男といるようになったのも
親父が不甲斐ないからだ
おふくろは可哀想なんだ
自分がシッカリしてないといけない
どんな理不尽も問題無いようにしてきた
だっておふくろはいつも
「あなたのため」
だって言ってたから
問題なんて起きちゃいけない
でも
どうしてなんだろう
どんなに頑張っても
自分のやりたいことを犠牲にしても
何も解決しない
状況は悪くなるばかりだ
頑張っても諦めても辛いことしか待ってないなら
もう
何もかもどうでも良くないか?
バイト代全額持って電車に乗って
ひたすら遠くへ行って
一週間くらい安宿を転々とした末
自殺の名所に辿り着いた
飛び降りようとして
下を覗き込んで
そこで初めて
足がすくんだ
死ぬってことを急に肌で感じた
何もかもどうでも良いと思ってた自分の心に
ものすごい恐怖が湧き上がってきた
身体が震えた
涙が止まらなかった
夫はこのとき
ああ、自分は確かに死んだんだな
って思ったそうだ
怖いと思っていた選択より
死の方が怖いんだって知った
これしかない
だった世界が
ひっくり返った
なんで俺
死ななきゃいけないんだっけ
やりたいことができないから?
何でできないんだっけ?
・・・あれ?
もしかして
俺
死ななくていい!?
今まであり得ないと思ってた選択だって
選んでいいんじゃね!?
パッカーン
そこからさらに一週間かけて帰宅
家の前には警察と半狂乱の母親の姿があった
夫は駆け寄る母親に告げた
俺大学辞める
スクール行って専門職目指すわ
夫は今就きたい仕事に就いて
イキイキと働いてる
母親とも何だかんだで仲良し
夫スゲー