PCB廃棄物保管今も7万件 使用中300件余り処理進まず | 近江毎夕新聞

PCB廃棄物保管今も7万件 使用中300件余り処理進まず

 米原市役所で三日に発生した職員感電事故は、自治体などが保管する蛍光灯安定器やコンデンサーなどのPCB(ポリ塩化ビフェニール)廃棄物が今も処理されないまま、不適切な管理状態にあることをうかがわせた。
 県循環社会推進課によると、昭和五十年に発効した「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づき、県内の自治体や企業などが保管するPCB廃棄物は平成二十四年度調査で、七百十事業所に約七万一千件弱がある。PCBが含まれているとみられる稼動中機器も三百件余りで、処理が遅々として進んでいない実態をうかがわせた。
 国の特措法で設立された日本環境安全事業株式会社(略称JESCO)が平成十六年度から北九州市、大阪市など全国五カ所の処理工場でPCB廃棄物の処理を始めたことで、「四十年来の保管」となっていたPCBの処理に目処が付いたとされたものの、一部保管事業者の話では、「処理を登録申請したまま返事がない」という状態が県内で長く続いていたという。昨年度から滋賀県が処理促進対象地域となり、処理件数が増え始めたが、中小企業などでは、「保管」と名付ける「放置」が今も続いているという。
 PCBは、水に溶けない、化学的に安定、絶縁性が良い、沸点が高いなどの性質を持つ、油脂状の合成化合物。電気機器の絶縁油、高圧、低圧のトランス、コンデンサ、 蛍光灯、水銀灯の安定器などに多用されていた。昭和二十九年から同四十七年にかけて約五万四千㌧のPCBが国内で使用されたという。
 しかし昭和四十三年に西日本各地で発生したカネミ油症事件などから、人の健康・環境への有害性が確認され、分解されにくく、広範に環境中に残留していることが知られている。生体に対する毒性は、脂肪組織に蓄積しやすい、発癌性があり、皮膚障害、内臓障害、ホルモン異常を引き起こすことが分かっている。昭和四十九年に「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づく特定化学物質(現在は第一種特定化学物質)に指定され、新たな製造・使用が原則禁止された。 使用済みPCB廃棄物は使用者責任で保管が義務付けられた。処理方法の当初は高温焼却処分、近年では脱塩素化分解法など複数の処理方法が開発されている。