「汽車土瓶」信楽学園が復刻 11月のSL北びわこ号運行日に発売 | 近江毎夕新聞

「汽車土瓶」信楽学園が復刻 11月のSL北びわこ号運行日に発売

 昭和三十年代に駅弁用の茶器「汽車土瓶」を製造していた甲賀市信楽町の知的障害児支援施設「県立信楽学園」(片岡卓示園長)が、ほぼ半世紀ぶりに土瓶の復刻生産を計画し、十一月のSL北びわこ号(JR米原~木ノ本間)運行に合わせ、SLの乗客にオリジナル駅弁とともに販売される運びとなった。
 学園では、売れ行きを見て、量産化の可能性を探り、収益を施設の運営費に充てる計画。弁当は土瓶にあわせ、昭和三十年代風のものを駅弁の老舗「(株)井筒屋」=米原市下多良=が企画する。
 汽車土瓶は陶器製の小型茶器で、列車網の整備に伴い駅弁が普及した明治時代に、信楽や益子など焼き物の産地で製造が始まり、急須型、水筒型など様々な意匠のものが造られていた。いずれもフタが湯のみを兼ね、容器の形やレリーフ、釉薬の色などで個性を競っていたが、昭和三十年代中ごろには軽くて丈夫、安価なポリ容器に押され、急速に衰退。ポリ容器もその後登場した缶入り茶、ペットボトル茶に市場を奪われ衰退した。植木鉢製造会社の設備を引き継ぎ昭和二十七年に開園した信楽学園(当時、信楽寮)も設立当初から製造を始め、最盛時は月産二万~六万個に達したという。学園運営のため、土瓶が廃れたのちも製造され、昭和三十九年まで米原駅で販売されていた。
 しかし汽車土瓶は陶器の温かみと保温性、茶のうまみを損なわない特徴から、一部の鉄道愛好家や旅人に支持され、コレクションの対象になるなど、最近復活の気運が高まっていた。
 県では、県文化財保護協会の畑中英二研究員が昨秋発刊した研究本「信楽汽車土瓶」をきっかけに復活気運が高まっていた。福祉施設への補助金抑制を検討する県が信楽学園に復刻生産を打診。窯業の生産教育に取り組む同学園では、今年四月から新容器の型を起こして、量産体制の準備を進めている。
 販売はSL北びわこ号が運行される十一月二、九、十六、二十二、二十四の五日間、JR米原、長浜、木ノ本の三駅ホーム。一日五十食限定で一セット千五百円。別に予約制で一日三十食を販売する。
〔写真〕発売される汽車土瓶入り茶と井筒屋の駅弁セット