どのような経緯で北朝鮮に拘束されることになったかは明らかではないが、不法入国と敵対行為などの罪で起訴されたと産経新聞が伝えた。普段はしない裁判の日程をスタインバーグ国務副長官の日中韓歴訪に合わせて公開したと言う。



米国になんとしても交渉の相手になって欲しい北朝鮮は、まさに人質をも利用する心積もりだと言うのが大方の見方のようだ。誠に度し難い気はするが、反面極めてしたたかでもある。



これに対して思い出すのは、我が国に金正男と見られる男が偽名を使って来日し、ディズニーランドで遊ぼうとして掴まったときの対応である。入国に違法な手段を弄したのだから、拘束し種々の取調べをしてしかるべきなのに、あっという間に送還してしまった。



その判断をしたのは当時の田中真紀子外相である。本人が自発的にわざわざ俗に言う「飛んで火に入る夏の虫」みたいな好都合なチャンスを、逃したのである。



北朝鮮にあれほど本人の意思に反し拉致されたと言う人が居たにもかかわらず、何の代償もなく、送り出すのである。これでは我が国が本気で国民を守る国かどうかが疑われる思いがした。



そのときのマスコミの反応も印象的である。マスコミは当該不法入国者を無為無策に送り返したことを本気で非難した論調の記憶がない。



印象はむしろ「大人の対応」とでも言いたげなのんびりしたものである。政府はそのとき送還に態々外務省の職員まで同行させているのである。



北朝鮮の記者を拘束した記事を見て、少し昔の事件を思い出し、彼我の差にため息をつくのである。