野人珍話列伝 スタンバイミー | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

少年4人が旅に出て歌がヒットした映画があるが、これは旅は旅でも海の旅だ。

1日がかりだったが必死で泳いで海峡を旅して、「ダ~リンダ~リン・・」などと鼻歌どころではなかった。

中学2年生の夏、幼馴染と津久見湾を泳いで横断した。

今では3人か4人か記憶が定かではないが映画に合わせて4人と言うことにしておこう。

幼馴染は水泳部の自由形800mリレーのメンバーでもあった。

泳いだ距離は5キロか6キロかも覚えていないが、一日中でも泳ぎ続ける仲間達だ。

未知の世界への冒険は幾つになっても楽しいものだ。

津久見はセメントの町で、津久見湾の深い場所は水深50mを超え、1万トン級の船も出入りしていた。

サメやクラゲの群れも怖かったが、このバカでかい船の恐怖には敵わない。

こちらへ向かって来るのが見えれば全速で泳ぎ抜けるしかなかった。

でかいプロペラに吸い込まれてミンチになるのは誰だって嫌だ。

目測を誤れば壁のような鋼鉄が迫って来るのだから、横断歩道の青信号の有難味がつくづくわかる。

途中パンツを脱いで皆でキャッチパンツ、疲れたら大の字になって海面で休憩、台風非難して来たタンカーを繋ぐブイによじ登り甲羅干しもした。

水袋だけは腰に紐で巻いて持参していた。

小さくても中華料理のフカヒレが見えれば全力で逃げる。

途中、漁船が数隻救助に来たが事情を話して礼を言った。

広い湾の真ん中で子供が泳いでいるとは思うはずもない。


小さな漁港の市営船の護岸に到着すると大人達が言った。

「お前ら何処から泳いで来たんじゃ・・」

本当のことを言って学校に通報されたら大目玉だ。

全員で口を揃えて言った・・「あっち・・」

しかし、4人共指さす方向がバラバラだ・・・

海水パンツのポケットに入れていたコインで切符を買い、船に乗り込むとさっきのおじさんが笑いながら言った。


「これから船であっちに帰るのか・・?」