原人物語10 原人に託した希望 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

前日の夜は2時過ぎまで原人にお説教、野人の真意を話して聞かせた。

原人の本棚には専門書だけでなく、歴史書や宗教、哲学書も多く、劇画も野人と同じような本を愛読していた。基礎となる学問の底辺が広いから野人の言葉が素直に受け入れられる。


野人理論は世界の常識を覆すものだ。

とてつもない大きな壁が立ちはだかり、それを超えるのは並大抵のことではない。

何重にも複雑に敷かれた社会の仕組みの中で暮らしを脅かされる人は大勢いるのだ。

不退転の意思を持って臨んでも途中で倒れることがあるだろう。

その覚悟が出来ているか、聞くまでもないことだが話して聞かせた。


原人の役目は「農法」のみならず、すべてに通ずる理論を確立することだ。

それが科学の壁を超え、理論的に証明された時、世界は変わる。

常識が反転した世界最大のパラダイムは天動説が地動説に変わった時。

しかしそれは身近なものではなく、暮らしに変化は及ぼさなかった。

しかしこれが認知された時には、農業だけでなく、漁業も、畜産も、環境も、CO2問題も、水不足も、医療の在り方や健康管理も、動物の暮らしも一変するはずだ。

それは河川工事や庭や公園の在り方、植栽緑化の方法など細部にまで及ぶだろう。

やがて人類史上最大のパラダイムと成り得る。


農業だけでなく、漁業復興の方法、植栽で荒廃した山林の復元法、そして森羅万象の理に適った「生ゴミの処理法」など、ざっと話して聞かせた。

原人は目を輝かせて聞き入っていたが、それは誰も思いつかない壮大な計画だ。


30を超えたばかりの原人は野人より長く生きられ、優れた頭脳も強固な精神力も体力も実行力も備わり、人としての優しさも志も持っている。

その原人に未来を託すことに野人は決めた。

この一年間ですべてを原人に伝えるつもりだ。


野人が骨を作り、原人が肉を付ける。

「たった一人の武士道」は二人になり、終わりのない物語はこれから始まる。




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3人目も・・ その次もやがて・・