武器よさらば 野人最後の棒術 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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野人は武器を捨てた  


十代から長年愛用したこの棒と双節昆も見納めだ  

棒は昆とも言い 4尺あったが野人は1mにカット

双節昆はヌンチャクとも言い 遠心力を利用した棒に違いない
ブログを始めた頃は野人流の棒術論をいずれ書くつもりだったがそれもない

工夫を加えたこれらの武具からは力学とその合理性を学んだ

護身 鍛練 魂・・

人がどう用いようがこれらの本質は武器であり目的は破壊なのだ


十数年前、山で猪と戦う為に双節昆に鉄芯を入れて改造した

闘志を燃やして使用したのはそれが最後だったが以後も数々の考案した武具は大切にしていた  

スポーツではなく異国の地で生きる為に始めた実戦武術であり 野人の道具だったのだ またいつか使うこともあるだろうと・・・
しかしもう必要なくなってしまった


人との実戦を放棄したのは二十代後半
人との争いや口論も議論も放棄したのは三十代後半

海中で大型サメと戦い 山で 猪とも戦った

そして間違った常識の壁を壊すのが最後の戦いと信じていた

壁を壊さなければ人は破滅の道を行くと考えたからだ


常識は生き物ではなく誰も傷つけないと思っていた

しかし常識は傷つかないが それを信じ 大切に守ってきた人の心は傷つく


それを教えてくれたのは人間であり 神様・・


そして明確な道理で心から納得させてくれたのは植物達だ

戦う必要もなければ  戦いからは何も生まれないと・・


彼らは戦ってはいない そして困ってもいない
不運な境遇でも嘆くこともない

懸命に生きているだけだ

人間がどう考えようがそれが真実だ
そしていつも微笑んでいる  すべての生き物に

だから人は森にやすらぎを感じる


そうして誕生以来数億年もの間使命を完全な形で果たしてきた
彼らを利用しようとした野人は知恵も心も彼らには負けた

負けたと言うより足元にも及ばないことを知り 心から詫びた

そして素直に彼らから学んだ


そうすると彼らは色々なことを教えてくれる ようになった

野人の心に語りかけて来て 色々なヒントを見せ 気付かせてくれる

その度に感動してペンをとった

頭に整理していた多様な知識が繋がり 完全な理論が次々に生まれた


野人は教えてくれた野菜に必ず礼を言うようになった

すると彼らは優しく微笑む


花を咲かせ実を結ぶ前に彼らの命を奪うのは辛い

しかし他の命を支えるのも彼らの役目
野人は必ず彼らのいくつかは花を咲かせ 晴れ舞台を作ってあげるようにしている

その時に彼らは最大のエネルギーを発する

それは喜びのエネルギーであり大地の生命力となる

生命は生命を呼び 多くの生き物が集まり働き続ける
ムー農園に生命力が満ちているのは彼らのおかげなのだ

食べ物に最も大切なものはそれだと確信した 成分や味ではない

人がそれに気づく日はきっと来るだろう


野人は武器を置いた
農機具から生まれたこれらの武具も元の農機具に戻す



武器よさらば  そして ありがとう