東シナ海の秘宝「猿とりの壷」 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

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連載東シナ海流は半ば書き終えてしばらく休憩中だ。後半は一難去ってまた一難、苦難の連続。この壷は東シナ海の海底から野人が引き揚げたもので、年代も何もわからない、古いのか新しいのかも。金の仏像など他にも色々埋まっていたがそんなもん引き揚げたら騒動の元だ。同じトカラ列島の宝島はキャプテンキッドが宝を隠したという伝説の島。一時期ゴールドラッシュならぬ宝探しで賑わった。亡者どもが夢のあと・・なのだ。

一瞬、その重たい仏像で寿司が何百回食えるか・・と煩悩がよぎったが、あっさりと元の場所に埋め戻し、たいして見栄えのしない丈夫そうなこの青胴の壷一個だけ頂戴した。船員が「船長、何それ?」と聞くから、「何処かの貨物船が捨てたのだろう、タコ壺に丁度良い」と答えておいた。野人はもう二度とそこは潜れないだろう。いつも避けて航行する船の難所で、そこが凪いだ光景を初めて見たが、その隙を縫って潜ったのだ。潮流は渦巻き、デカ~いサメがうようよいたから次はきっとエサになる。航行すら難儀なのにこんな海に潜ったらそれこそ死者が出て野人は遺族に恨まれる事になる。その話はまた東シナ海流で詳しく。

それからしばらくは物置で眠っていたがこれがまた役に立つシロモノだった。

そう~! 「猿の捕獲」に最適なのだ。だから「猿とりの壷」と名付けた。適当な花瓶か壷を探している時この壷を思い出し、頭にキンキラキ~ンと蝶々が舞った。大きさも丁度良い。やや軽い分、仕掛ける時には中に鉄の塊を入れて重くすれば良い。

猿の捕獲は簡単だ。集落近くに畑を荒らしに来る猿の群れは人間と距離を保つ。老人や女子供に対しては厚かましいが男には用心深い。50mくらい離れたところでいつでも逃げられるようにこちらを観察する。そこでこれ見よがしにピーナツを旨そうに食べてみせる。そしてその辺にばらまいてその日は引き揚げる。ピーナツはきれいになくなり、翌日も猿がいれば同じことをやるが、いなければまたいる時にやって見せる。3回目が勝負、ピーナツをばらまいたところからやや離れた場所、つまり野人が隠れた場所と中間の所にこの壷を横に置き、ピーナツをたっぷりと入れておく。そこまでの誘導用にも適当に撒いておく。自分の姿を見せても安全圏なら用心して近づいて来るが、見えないほうがやりやすい。

猿が壷に手を突っ込んでピーナツを思い切り掴んだ瞬間、「どっりゃ~!」と大声上げて大きなタモ網を持って駆け寄るのだ。パニックになった猿は目ん玉ひんむいて必死の形相で逃げようとするが手が抜けない。壷を引きずるのだが遅い! 網を上からバサ!とかぶせて一丁あがりだ。思い切り掴んだピーナツを離せば抜けるのだが、そこがエテ公だ。パニックになればそこまで思いつかない。人間が猿知恵に負けるはずがないのだ。猿は欲深いから仲間にとられまいと必ず思い切り掴む。そして未練がましく離さない。

捕まえた猿に首輪をしてその場所にしばらくつないでおく。適当にエサや水を与え、あることを数日間するのだがそこから先は秘密。仲間の猿は人間に何をされるか遠くから見ている。そして二度と来なくなる。猿には学習能力があるからだ。そして囚われの猿はお役御免、無傷で釈放だ。猿が人から学び悪知恵を持つなら、人もまた猿から学びそれ以上の悪知恵を持てば済む事だ。共存共栄、地球は生き物すべてのものだ。あはははは~!

野人はもう二度とやらないと決めている。何故なら・・笑いも涙も止まらなくなるからだ。