タコとの付き合いは長い。
小学校の頃のバトルが縁で今も続いている。
生まれ育ったのは大分県津久見市の漁村で、6歳の頃には市内に出ていた。
夏休みはお盆を中心に漁村に長期里帰りだ。
同じ市内でも市営船で2時間かかる僻地で道路は開通していなかった。
小学4年くらいだったと思うが、お盆は里帰りの人達で賑わい、木造船に乗り合わせ、櫓を漕いで無人の浜へ泳ぎに行った。
その日は都会から里帰りした親戚の女の子も何人かいた。
真っ先に海に飛び込んだのは良いのだが、タコを踏んづけてしまったのだ。
猫は何度も踏んだがタコは初めてだ。
1キロを超える大きなタコで、昼寝中に踏まれたタコは怒った。
足を数本伸ばして吸い付かれ、腰の辺りまで伸びてきた。
「うわあ~!タコじゃタコ!」と叫ぶと皆が寄って来た。
右足に絡まれたので左足で踏みつけて引き離そうとしたのだが、グニャグニャして歯が立たない。
タコの足は海水パンツまで届き中まで入って来た。
猛烈な力で引っ張られたパンツはずり落ち始めた。
「わ!わ! やめれ!このタコ!」とパンツを押さえたのだが、見事にずり下ろされてしまった。
当然集まった人は笑いが止まらない。
タコの足はチンチンまで吸い付いて引っ張ろうとしている。
「踏まれたタコはワラをも掴む」・・が
ワラほど細くはない
見かねた大人が足を引き離してくれたが、冷たい水で一度縮んだチンチンは再び伸びて・・ヒリヒリしていた。
まだ、毛が生えていないだけマシだった。
結局そのタコは最初の獲物となり浜で焚き火に放り込まれた。
浜には流木がたくさんあり燃料には困らない。
高校卒業までそうやって浜で焼いて食べた事は数え切れない。
黒焦げになっても手で払って食べれば非常に旨い。
サザエもアワビも同じやり方だ。
大人が包丁で切り分け、食べる段階になって一人の女の子が言った。
「私・・その足・・食べられない」と言って野人のほうをチラッと見ながら頭を食べた。
足の一本がチンチンに絡みついたのは間違いないが、海水でよく洗って、火で消毒されているにも関わらず・・ショックだった。
それに、足は八本もあるから
当たる確率は低い・・ 8分の1・・
その子が初恋で、その想いは中学卒業まで続いた。
夜、みんなでトランプをしていても思い出すらしく
「あの時、タコがたかしちゃんの・・・」と言って吹きだすのだ。
タコによる傷心は消えない。
タコに敗北したあの時からタコを研究し、タコハンターと呼ばれるほど「タコ獲り」は誰にも負けず、海に潜れば必ずタコを仕留めていた。
このコーナーでは、宿敵ではあるが、非常に旨くて謎に包まれたタコの話をして行きたい。
タコを見直し、これからの食生活が変わるほど役に立つ事だろう。