猪突猛進 猪の武器は三つ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

幼稚園に猪が突入して被害をもたらした。

自転車を突き倒し、人をなぎ倒し、ガラスを破り足に噛み付いたらしい。

都会の神戸でも六甲山が迫っているので民家近くまで下りてくる。

慣れてくると猪も愛嬌を振りまき、餌をもらいに来るが猛獣である事に変わりない。


一度逆上すれば野性の本能で行動、手負いの猪は危険と言われるゆえんだ。

一頭の猪を狩るのに何人もの人と猟銃と犬が必要になる、つまり寄ってたかってやっと仕留めるのだ。

人が一対一で歯が立つものでもなく、特に80キロを超えるものは軽四トラックくらいは吹っ飛ばしてしまうから危険極まりない。

猪は「猪突猛進」と言われるくらい突撃体当たりのイメージが強く、小回りが利かないと思われているがそうではない。

猪を追い詰め、取り囲んだ敏捷な犬達も牙で腹を裂かれてしまうことが多い。つまり小回りは利くのだ。

スピードが出れば自転車だって小回りは利かない。

猪の突進力の凄さは木だろうが何だろうがなぎ倒して直進することで、猛進と言われても盲進ではない。

突進だけなら打撲で済むかもしれないが、牙で切り裂くのがオス猪の武器、しかし猪の最大の武器はメスに多い「噛みつき攻撃」で、強烈な歯で指くらいは食いちぎる。

ニュースでもズボンを噛み裂かれていたようだが革靴にだって穴が開く。

猪の頭蓋骨、牙、顎、歯は頑丈極まりない。頭はバットごときでぶん殴ってもビクともしないことからそれがわかる。

山の中で罠にかかった猪を見れば「目がテン」になる。

足はワイヤーに締め付けられているが、ワイヤーが届く範囲の円内は木も草も全てなぎ倒され、赤土で綺麗に整地されているのだ、まるでブルドーザーでやったみたいに。

人を見るとワイヤーを引きちぎる勢いで泡を吹きながら突進、ワイヤーで阻止されるが、それを何度も繰り返す。

自分で足を食いちぎって逃げたという狼みたいな猪もいる。

一昔前、どうしても猪と戦うと決めて体を鍛え直し減量、独特の武器も設計製作し、夕方一人で山に入った事がある。

「猪と戦うなんて気違い沙汰」と回りの友人は皆止めた。

考案した武器と戦う理由についてはまたいつか話すが、とにかく許可を得た上で、定められた期間で、定められた猟具を使わないと違法行為になる。

たまたま夜の山を散歩して出くわして正当防衛ならまあいいか・・な。

結果は大きな声では言えないが、猪の骨付きハムとベーコンは本当に旨かった。

とにかく猪は非常に頭が良く嗅覚が抜群で、人の臭いの付いた罠には滅多にかからない。

自分の臭いの付いた獣道だから迷うことなく山でも全速疾走出来る。

それを逆手に取られるから獣道で猟銃の待ち伏せに遭ってしまう。

獣道を探し、待っていればイヤでも猪に出会える。

猪の牙は紙がス~っと切れるほどの切れ味だが、毎日木にゴシゴシこすりつけて磨いているらそれも当然だ。

しかし、戦った経験から猪の最大の武器でもあり怖いのは「噛み付かれる」ことだ。

猪がその気になれば足の腿肉は簡単に食いちぎられ、牙も当たるから切り裂かれる。猪に出くわしたら、逃げるしか方法はない。

どんな獰猛な犬と素手で戦っても負ける気はしないが、猪は急所の攻めようがない。

犬との違いは段違いの重さと分厚い鎧のような皮膚で、急所は心臓しかない。

両後ろ足を捕まえ、ハンマー投げのように木に頭をゴッツンコすれば勝てるのだが簡単ではない。

失敗して逆に猪様の怒りを買ってしまった。

触らぬ猪にタタリなしと言いたいが、触らなくても追いかけてくるし足も速い。

もうデカイ猪とやりあうのは二度とごめんだな。

猪よりさらに大きくてもサメのほうがまだマシだ。