タイ オリエンタルホテル料理長 | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

昨年、アジアの食材を求めてバンコクを訪ねた。

タイはこれで4度目になる。

香港、台湾へも行ったが、東南アジアの人達は魚介類の調理が上手だ。

日本人は素材の持ち味を引き出す事に長けているが、中国、東南アジアの人達はどんなものでも簡単に調理して美味しく食べる器用さを持っている。


とにかくスパイスを使いこなすのが上手い。

日本ほど四季の差がないから旬にはそれほどこだわっていない。

あるレストランで出た魚の丸揚げに、唐辛子のタレをつけて食べた友人が「旨い~!」と感激して魚の名前を聞いて来た。

日本の池などに生息する外来種のライギョと言う肉食魚で、あまり食用にはされていない。

名を教えると「ライギョって高いか?」と言うので「日本では幻の高級魚ビックリマーク扱い・・」と答えた。


食材として幻には違いなく、高級低級などは基準もない。

日本に帰ると「タイのライギョは旨かったなあ~ラブラブと嬉しそうに人に話していたが、聞くほうも羨ましそうにうなずいていた。

ライギョもなまずも調理法次第では美味しく食べられる。

フライ、ムニエルなどは食べた時に魚の名がわかる人はあまりいない、白身だとなおさらだ。


海外の聞いたことも無いような魚が出回っているのに、相変わらず国内では魚のランク付けが定着、偏見から不等に扱われている魚が多い。

名前で差別するのはどうかと思う、自らの舌で判断すべきだろう。

必ずしも味は価格ではない。

ブランド魚のように知名度だけで異常に高くなる魚介のほうが多いが、名前代にお金を払うようなものだ。


タイにはオリエンタルホテルがあり、その独特のサービススタイルとロケーションからアガサクリスティはじめ世界中の著名人が好み、10年間世界ホテルランキング1位に君臨していた歴史あるホテルだ。

友人のタイ料理総料理長ヴィチットを久しぶりに訪ねた。

彼は日本にも一ヶ月滞在していたことがある。20代で料理長に就任しただけあってその感性は素晴らしい。特にエビ料理は強烈な印象が残っている。


最初の訪問は30代の頃、タイ国運輸大臣、事務次官夫妻に招待されて一緒に食事、その後訪ねたオリエンタルでヴィチットに無理矢理食べさせられた3種のエビ料理に感激した。

もともとエビはあまり好きではなく、満腹感もあっていやいや食べたのだが強烈に旨かった。

それ以来、タイ料理と食文化にのめり込んで行った。


ヴィチットの両親はパタヤで小さな食堂をしていた。

休日に実家まで案内され、その食堂で色々な料理を食べさせられた。

器は無造作に竹を切ったもので、おせじにも衛生的とは言えなかったが、素朴な家庭料理にタイの食文化を感じた。

両親は大衆食堂、息子はタイ料理の頂点、そのギャップが何とも面白い。


ヴィチットはホテル内にスパイス室と教室を持っていて、スパイス室の中を案内してくれたが、その多彩さに感心、コショウ中心の日本とは随分違う。

旨いトムヤムクンスープ、タイカレーの作り方も教えてくれた。

川向いのタイ舞踊レストランは200人以上が食事しながらショーが楽しめる。


今回はビジネス研究会10人で食事したが、同席した教授の奥様方がどうしてもヴィチットに会いたい、メニューに彼のサインが欲しいと言い出した。

終わりがけに彼を呼ぶと気軽にサイン音譜してくれた。

「ユーは?」 と 聞くので・・

そんなもんいらん・・汗


彼は小柄だが映画スターみたいな顔をしているので舞い上がった奥様方の餌食メラメラになった。

それでも笑いながら記念撮影に応じていた。

とにかく昔から女性は大好きでマメな奴だ。