ラッコの気分で「ウニぎり」・・・ | 野人エッセイす

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森羅万象から見つめた食の本質とは

企業を退社した数年前、身も心も開放されて人生最良の時期だった。海水パンツ一枚でバイクに跨り自宅から1分の漁港へ毎日通った。防波堤にバイクを乗り捨て、50mの防波堤を走り、先端の高さ5mから「ヤッホー!」と叫びながら飛び込んだ。200mくらい沖に小さな岩が飛び出ていてそこまで泳ぐ。そこはウニがたくさんいて、石で割って海水で洗って食べていた。ウニの最高の食べ方で一番旨さが引き立つ。そこで水平線を見ながら座っているのが日課だった。毎日やるものだから、いつも見ていた地元のバアちゃんが、「あんた~幾つだ? ほんにまあ、いい年こいて飽きもせず」と笑って言う。濡れたままバイクで帰り、そのまま庭の水道ホースで水浴びしていた。ある日昼食の時間に思いついた。あの場所で「ウニぎり」にして食べようと。水平線を見ながら最高のウニのおにぎりだ。ご飯をビニル袋に入れて腰に巻きつけ、いつものように飛び込んで岩へ渡った。石でウニを割っている時に気づいた、こりゃまるでラッコだと。腹に乗せて割るかしゃがんで割るかの違いで、石でコツコツ割る事には変わりない。ご飯の中にウニを入れて、塩の代わりに海水に濡れた手でおむすびを作った。水平線を見ながら中身たっぷりでジューシーな「うにぎり」はこの世のものとは思えないくらい旨かった。ラッコの気分も味わえたし、とにかく遊び心たっぷりで笑えて面白い。また・・・食いたい・・うにぎり・・・