今回のムツさんの返信は、犬を飼っていらっしゃる方でしたら
どこかでこの一派の説を聞いたり読んだりして、
きっと「これって本当?」「自分もそうした方がいいの?」と
考えられたことが多いのではないかしら、という
問題についてとなります。

たくさんの方にお読みいただき、
犬と暮らす仲間として、ごいっしょに
考えをめぐらせていただければ、と
思いました。

それではまず、ご質問をいたたきました
小次郎さんのメッセージを紹介いたしましょう。

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件名■ドッグトレーナー

はじめまして。

突然ですが、シーザーミランというアメリカの人気ドッグトレーナーをご存知でしょうか。
日本でもCSのナショジオでカリスマドッグトレーナという名前にて彼の番組が放送されていますが、
その手腕たるや、素人の私から見ればそれはそれは見事なものです。

彼は様々な問題を抱えた犬のリハビリを行い、同時に飼い主にどのように振舞うべきかを教えます。
凶暴な犬も彼にかかれば程なくして大人しくなり、また、飼い主に、犬に対して取るべき態度を教え、犬との関係を是正するわけです。


しかしながら、毎回違和感を感ずるのは、彼は徹底して、
飼い主は群れのリーダーとして、穏やかに毅然とした態度で振舞うべきであることを主張する点です。

また、例えば前足を飼い主にかけるような仕草も、よくない行動としてしつける傾向にあるようで、
そこも引っかかります。
ある飼い犬が、飼い主が自分を責めて涙を流しているときに、すっと近づいてきて、飼い主の膝に前足をかけ、顔の匂いを嗅ぐような仕草をしましたが、
それを氏は、飼い主が弱っているので上の立場に立とうとしている、と指摘しました。
しかし私には、飼い主を心配しているようにしか見えなかったのです。

シーザーミラン氏は、メキシコの牧場で育ち、数多くの犬を特に訓練することもなく使役させていたそうです。
彼がちょっとした仕草だけで犬を手懐けたりする様子をみると、きっとそうした経験から自然と学び得た事だから上手くいくのだろう、と素人の私は考えるわけですが、
リーダー云々がどうにも納得いかず、首を傾げている次第です。
わかり易い説明を後付で無理やりつけたのではないのか、と勘ぐってしまうのです。

あの番組を全て間に受けてしまうと、上手く犬を手懐けようとも、
犬との関係がかえって希薄になりはせぬかと感じてしまいます。

どうも私の如きがこの様な事を論ずるのは大いに身の程知らずですし、情報が不足しすぎて如何ともお答えになりようが無いかとも思いますが、ああした方法論や考え方というのは、正しいのでしょうか。

不躾な質問、大変失礼いたしました。

小次郎

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小次郎さん。

お便りありがとうございました。
そろそろだと期待はしていました。

この問題、動物と人間の解釈につきましては、
意外と根深く広がっているので根本的に話さなければならないと思っていました。
その意味でありがたい、と思いました。

直感は過たず、と言います。
あなたが、犬の態度を見て、「どうもおかしいよ。納得できない。」と思ったことは、
私は、正しいと思います。
それは素直に、正直に現実に向き合っているからであります。
ともすると、一つの理屈を全部にかぶせて現実を理解しようとする人たちがいます。
これは、大変大きな間違いをいたします。

まずですね。アメリカの、このミニ・カリスマドッグトレーナー、ミランという人ですか。
この人はかなり、一つの理論で色々なことを解明しようとしています。
それは、オオカミの群れの観察からきたアルファオスと他のメンバーとの関係を抜き出して、
それだけを人間の社会に適応しようとしているのです。
そこに、本当に大きな誤りがあります。


実は、私は彼の本拠を訪れています。
アメリカにロケに行った時、コーディネイターが、
「テレビで人気の人がいるよ。」と言って無理やり私達を引張っていきました。
行ってみると、日本からツアーが来ておりまして、しかも彼から犬の躾理論を学んでおりました。
私は、教室の一番後ろにおりましてその説明を聞いておりました。
聞いているうちに10分持たなかったですね。これはだめだ、と思いました。
すべてが嘘っぱちでした。

それでは、論を進めましょう。

犬が、飼い主の肩に前足をかける、これをですね、様々に解釈して
「絶対やってはいけないこと」だと彼は説いております。
私は、数百の犬と付き合いましたけれども、
犬は非常に喜んで、むしろ愛情を表現するために、飼い主の両肩に前足をかけます。

まず、その表情を見てください。
唇がゆるんでおります。目に緊張は見られません。
耳は軽く倒れておりますが、これは服従を意味します。尻尾は、軽く振られております。
これは、犬が喜んでいる証拠であります。

飼い主の肩に前足をかける犬の99、9パーセントは喜びのためにかけると思います。
これを逆に、飼い主とその地位をかわるために、犬が上に立とうとする、そういった解釈をします。
その時に犬の表情を見てください。
もし、そんなことをする犬でしたら、耳は深く倒すはずです。
唇に緊張が見られるはずです。特に上唇は非常に緊張して前歯が露出するはずです。
目にも緊張が見られます。
それから、両耳の間から背にかけてのいわゆる、たてがみにあたる部分の毛が逆立つでしょう。
でも、決してそういうことはしないのです。

この話は長くなりますので、続きはまた
明日としましょう。

To be continued 

 BYムツさん 畑 正憲