あおらさん。
お待たせいたしました。
ムツさんからの返信が届きましたので
掲載いたします。
まずは、いつものようにあおらさんからいただいた
メッセージを読んでみましょう。

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はじめまして。ムツさんにぜひアドバイスいただきたく、メッセージお送りしています。
我が家は元旦から念願のトイプードルを家族に迎えました。
現在2ヶ月半の男の子です。
うちは私も主人も車いす、3歳の息子がいるという家族構成です。

ジャム(トイプードルの名前です)を飼い始めて、しつけのことで相当悩みました。
サークルに入れた状態で私たちが車イスから居間のじゅうたんに降りると、出してくれと大騒ぎ。
出してあげると私たちの顎や腕や足や…とにかくあちこち噛むし、吠えるし唸るし、
どうしていいのかわからなくてあらゆる本やネットを読みあさりました。

吠える時に口を押さえてしっ!と叱る、静かになったらよし!と体を2回くらい軽く叩く
(犬は犬同士のじゃれあいで喜びを得るので、軽く叩く振動が一番嬉しいのだとある本で読んで)、
あまりに鳴くときはサークルの端を叩く天罰方式、
ご飯をあげるときや体を触る時、サークルから出す時は必ず仰向けにひっくり返して
「こっちが上だ。お前が下だ」と主従関係を教え込むという方法。
すべてやりました。吠える、鳴く時の完全無視もやりました。
だんだんと私や旦那、息子のジャムに接する態度は厳しくなり、
そしてジャムも私を警戒するようになり(私が手を出すと逃げる、吠える、うなる)、
噛むのもひどくなりました。


私たちは何か矛盾を感じ始めました。

多くの飼育本に、
「犬の要求に応えるのはやめること。吠えたから何かをしてもらえた、鳴いたから何かをしてもらえた、と思わせてはいけない。それは人間が犬より下の立場だと認めていることになる。
また、絶対に目を合わさないこと、声をかけないことを徹底すること。
主従関係をしっかり作らなければ、犬は好き放題にする。
それを止められない関係になってしまう。
こちらが出したい時にサークルから出す、こちらが与えたい時にごはんをあげる(吠える時、鳴いた時はあげてはいけない)、こちらが触りたい時に触る。
しかし必ず、お前が下だと服従させるために仰向けにひっくり返して、しばらくその状態を保ったあとに行う」という内容がありました。

私はこれまで32年、動物と接する機会は全くなく(母が喘息、私も軽い喘息があるので)、
恥ずかしい話、わんちゃんを抱っこしたのもジャムが初めてでした。
だから「犬と人間の関係」について全く無知で、
家族になりたいと思っていたものの私が出会った多くの本にはおやつをあげることで指示を覚えさせるとか、叱るとか天罰とか、とにかく主従関係を築かなければということばかりが書いてあったので、そういうものかと思ってしまったのです。

しかしおかしいなと思いました。

ジャムはとっても寂しそうな目をしていました。
私と目を合わせることは一切しなくなりました。
私はジャムに、何を求めているんだろうと考えたのです。

私が上になること?私の思うように動けと言いたいのか…
いや、それらは全く考えていなかったのです。
当初、ジャムとはあったかい家族になることばかり望んでいたのに…。
飼い始めたら、本を読み始めたら、とにかくこちらが上にならなければ、
そうじゃないとうまくやっていけないと思いこんでしまった。
なんだかとっても申し訳ない気持ちになりました。


ジャムだって、心があるのですよね。
ジャムは、私たちが初めてペットショップで出会った時、ぺろぺろと顔をなめてくれたのです。
それまで犬は飼いたくない!と言っていた息子も、
ジャムを一目見て「ママ、このわんちゃん、連れて帰ろうよ」と言ったのです。
きっと必然的な出会いだったと思っています。
だから、目を合わさない、無視する、声もかけない、ごはんは人間があげたい時に(吠えている時ではなく)、触るのもサークルから出すのも、人間主導で。
遊ぶ時だって人間が遊びたい時に遊び、おもちゃはすぐに片付けると本には書いてあったけど、
それじゃジャムは生きているとは言えないよと思ったのです。
ジャムだって、遊びたいときがあるだろうし、体をさわってもらいたい、
サークルから出たい、お腹が減った、色んな感情があるだろうに。
それをすべて無視しろというのはおかしいじゃないか。
それじゃただの、人間のおもちゃだよと考えました。


そしてそんな時、主人がムツさんのHPを見つけてきてくれました。
HPの中のブログ内の「愛育こそ大切であり、しつけなんて2の次」という言葉を見て、
私は涙が止まりませんでした。
私はジャムになんてひどいことをしたんだろうと改めて思ったのです。

ジャムはどんなに寂しかったか、つらかったか、悲しかったか…。
主従関係ではなく、信頼関係こそが大事なんだと改めて思いました。
私は色々な情報から、主従関係を築いてこそ、信頼関係が出来上がるのだと勘違いしていたのです。
それから、私はジャムに謝りました。
目を見て、今まで怒ってばかりでごめんね、つらかったね、本当にごめん、もう無視しないよ、
ちゃんとお話聞くからね、ごめんね、いっぱい遊ぼうね、ジャムのこと、大好きなんだよ、と。
ジャムは初めて私の目をまっすぐに見てくれました。

それからは、サークルの側を通るたびに声をかけ、たくさん触り、
仰向けにひっくり返すなんてことは一切やめ、
ごはんを用意し始めると音とにおいで気づき「きゅーんきゅーん」と鳴くので
「はいよ、今持って行くから待ってて」と声をかけ、
私たちがじゅうたんに降りた時サークルから出してくれと鳴いて吠えたら
「ちょっと待って、今もう少ししたら出すから」と事情を説明し、
出してあげた時には「お待たせ、ごめんね待ってくれてありがとう」と言い、
噛んだら「大丈夫、もういやなことはしないよ。大丈夫、ジャムのこともちゃんと考えてるよ」と抱きしめ、頬ずりし、
息子にそうするようにジャムにもめいっぱいの愛情を注ぐようにしました。
お恥ずかしいながら私がこの気持ちに気付いたのは数日前で、
まだ数日しか実行していないけれどジャムは驚くほどに落ち着きました。


サークルから出してくれよ要求はすごいけれど、
それは絶対に車いすからじゅうたんに降りている時だけで、
車いすに乗っている時には出してくれとは一切言わないので
その点がすごいなぁと逆に感心してしまうし、まず、噛むことがなくなりました。
今までとにかく噛んでいたのに、ぺろぺろとなめてくれるようになりました。

飛びついてきて喉だのアゴだの耳たぶだのをなめながら噛むことがあるのですが、
その時は「噛んだら痛いでしょ、それはいやだなぁ。大丈夫だよ、嫌なことはしないよ」
と言いながらぎゅーと抱きしめるとおとなしくなり、
ごめんねとでも言いたそうな顔をしてぺろぺろしてくれるようになりました。
今まですぐに噛みついてきてあまり撫でさせてくれなかったのですが、
今では撫でると舐め返してくれるようになりました。
何より私の目を見るようになり、膝にも喜んで乗ってくるし、
抱っこされながら私の目をじーっと見てくれたり、私を怖がっていた時とは全く違う顔を見せてくれるようになりました。
そしてトイレシートをぺろっと一枚敷いておくと、そこでおしっこをしてくれるようになってびっくりしています。
サークル内では100%成功していたものの外ではあちこちにしちゃっていたのです。
特に教えてないのにびっくりです。
少しずつだけれどジャムと心が通じてきた気がしています。
きちんと心をこめて付き合えば、通じないなんてことないんだと改めて思いました。

これからもしっかり愛情を注いで、とにかく仲良しの家族になっていきたいと願っています。
ただふたつだけ、気になっていることがあります。


ひとつめは…息子がジャムのことをまだ苦手で、サークルから出していると逃げ回っています。
ジャムは息子と遊びたくて遊びたくてすぐ飛びついていくのですが、
息子はそれが怖いらしく「やめて!!」と大泣き…。
私が息子と遊ぼうと車いすからじゅうたんに降りるとジャムが出してよと鳴き、
ジャムを出すとジャムが息子を追いかけまわすので息子は逃げ回って最後には泣き始める…と、
悪循環になっています。

息子とジャムとの関係をどうしていったらいいのかと悩んでいます。
一緒にお世話をしたり、話しかけをしたり、興味はあるようで色々一緒にやってくれるのですが、
実際にサークルから出すと「ママ、中に入れて!」と怒ります。
遊んでいる時に飛びついてこられたり、邪魔されることがとても嫌なようです。
これはどのようにしていったらいいでしょうか。
私がジャムを制止していますが、リードをつけて出すのも自由を束縛している気がして嫌ですし…
かといって息子と遊ぶ時はジャムはサークルというのも違う気がしています。
アドバイスいただけましたら嬉しいです。

また、私が車いすからじゅうたんに降りている時は、ジャムは出してあげるまでずっと鳴き吠え続けています。
ゆくゆくは放し飼いにしたいのですが、
あちこちの本に「放し飼いにすると家全体をテリトリーと考えてしまい、犬にもストレスがかかる。このため、常時サークル内で生活させ、遊ばせる時だけ外に出すのが好ましい」と書いてあったため今はサークルメインの生活をしています。
放し飼いにすると犬にストレスがかかるというのは本当でしょうか?
また、放し飼いの時期はいつごろからOKなのでしょうか…。

長々と申し訳ありません。上記2つの困っている点について、アドバイスいただけましたら嬉しいです。どうぞよろしくお願いいたします。

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あおらさん。拝見しましたよ。

いいことをしましたね。
犬を厳しく躾ける、それをですね、やめただけでも立派なものだと思います。
第一歩なんです。

そして次には、サークルの件ですけれども、これは動物行動学をまったく知らない
素人のトレーナー、それから自分は動物の専門家だ、何十年やってきた、という人たちが
安易に動物行動学の言葉を使うんですね。
信用しないでくださいね。

テリトリーというのはその動物が生きていくために必要中十分なものが含まれている
空間なのです。餌場があり、水場があり、斜面があり遊び場があり、子育てをする場所がある、それをひとつのひっくるめた空間としてテリトリーというんですね。

サークルの中に何がありますか?
遊びがありますか?餌は来ますけれども、それは与えられるだけで餌場じゃありませんね。
こんなものはテリトリーなんていう風にいうのは、まったくの間違いで学問的にも
ゼロ、というよりもマイナスと思ってくださいね。

私は、サークルをとりはずすことをおすすめいたします。
無用の物ですね。
病気になったときとか、どうしてもあまり活発に動いたらその動物に悪影響がある、というようなときにはサークルは非常に役にたつんです。

でも普通に生きていくときには犬には必要がないものなんです。
テリトリーといいますけれども、犬はですね、人間といっしょに生活しているんです。
それで、餌とか水とか、そういうものは人間に与えられて人間に依存して生活しているんですね。
ですから、人が住んでいるところ、そこで生き生きと行動することが一番よいことだと思います。

それで、まず犬を飼育してやらねばならないことは、「気持ちを切る」ということなんです。
それは、遊んでいるとき、それから一緒に生活をしている時に自分が必要でないと
思った時には「やめ。」と言うんです。
「もういいよ。」これを犬に教えるんです。

僕の犬たちは、僕を大変好きですよ。
普通の人より好きかもしれませんね。
ですけれど、私が椅子に座って「やめ」と言いますとほとんど近寄ってこないですね。
そして、自分たちの生活をしています。

あなたは、はからずも車椅子に乗ったときに、その「やめ」を実行したんですね。
それは、素晴らしいことなんですね。この「気持ちを切る」ということを
できるようになりますと、子育てが非常に楽になってくるんですね。

人間の子どもでもそうでしょう?
のべつ、24時間子どもと遊んでいられますか?
ある程度遊んだら、「ハイ、もうやめね。お母さん仕事があるからね。ハイ、一人で遊ぼうね。」といってやめるはずなんです。
犬もおんなじなんです。
それをきちんとやることがとても大切なんです。
それが、お出来になったんですね。その分で非常にいいと思います。

ちょっと長くなります。
この続きはまた明日お話しましょう。

BYムツさん 畑正憲
 To be continued