北朝鮮を動かすのは、やはり「軍事的圧力」という現実 | 武藤貴也オフィシャルブログ「私には、守りたい日本がある。」Powered by Ameba

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国家主権、国家の尊厳と誇りを取り戻す挑戦!品格と優しさ、初志貫徹の気概を持って(滋賀四区衆議院議員武藤貴也のブログ)

   米朝関係の軍事的緊張が増し、いよいよ武力衝突に至る可能性も高まっている。北朝鮮がこのまま核開発を続けるか、あるいは本当にグアムにミサイル攻撃を行うような事態でも発生すれば、日本のみならず周辺諸国は米朝軍事衝突に必ず巻き込まれていくことになる。

  日本のメディアも、ここまで来てようやく北朝鮮の脅威については報じてはいるものの、一方で、日本はどう対応したらよいのかという点については殆ど論じていない。米国の行動の推移を見守るだけで、我が国の「敵基地攻撃能力保有」の議論を始め、主体的に対北朝鮮政策をどうすべきか、あるいは対中、対露政策をどうすべきかという点については、殆ど触れられていないのが現状である。

   そこで、ここでは今後の北朝鮮の動向と、今後日本が取るべき安全保障政策について考察してみたい。

 

 

北朝鮮による核ミサイル開発が現実化してきた

   これまで北朝鮮は、これ以上ないくらいの強い言葉で、米国や韓国、そして日本などを非難し、敵意をむき出しにしてきた。「韓国は一撃で灰になり、日本列島は沈没し、米国本土には核が降りそそぐ」などという挑発的な発言を行い、6カ国協議をはじめ外交交渉は全て自らの我儘とも言える理屈で頓挫させてきたのは、周知の事実である。今日に至っては、豪州に対しても「米国への無条件かつ熱狂的な追従をやめなければ核ミサイルで攻撃する」と主張し、中国に対してまで「我々との関係に及ぼす破局的な結果も覚悟すべき」と言うに至っている。

   一方周辺諸国は、そうした北朝鮮の言動に対し、これまでは冷静に対応してきた。ミサイルを近海に打ち込まれる事態に至っても、日本はこれまで通り「抗議」を繰り返し行うのみで、経済制裁は維持強化するものの、北朝鮮は中国ロシアとの貿易を維持しており、その効果が限定的であることも理解していながら、それ以上の行動は取らなかった。

   その理由は二つである。一つは、北朝鮮の挑発は、あくまで食糧難や人権侵害などに苦しむ国民の不満や、国内での熾烈な権力抗争から、外へ目を逸らすことが目的だとするもの。そしてもう一つは、北朝鮮のように経済力や技術力をはじめ、国力の小さな国が、実際核ミサイル開発を実現し、まして自滅の道となる他国を攻撃することはないだろうという分析である。

   確かにこの二つの分析は、それぞれ一定の説得力がある。しかし、昨今の北朝鮮情勢を見ると、金正恩は国内外において非常に追い詰められており、状況もそれに応じて大きく変わってきた可能性がある。北朝鮮は今年に入り、既に12回ミサイル発射をし、米国ワシントンに届くミサイルを開発する可能性が現実化してきた。実際、米紙ワシントン・ポストは今月8日、北朝鮮が核弾頭を小型化し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)への搭載が可能になったとする米国防情報局(DIA)の分析を伝えている。

   そして、自滅となるはずの攻撃も辞さないと強気の姿勢を具体化し、グアムへの攻撃を明言する事態となった。北朝鮮国営の朝鮮中央通信は、「金絡謙朝鮮人民軍戦略軍司令官が、「米国に厳重な警告を送るため」として、中長距離弾道ミサイル「火星12」4発を米グアム島周辺に同時発射することを慎重に検討していると発表した」と報じた。

   北朝鮮は国内の不満を抑えきれず、核ミサイル開発の成功をもって、本当に武力攻撃や戦争を始める可能性も否定できなくなってきたのである。

 

 

トランプ大統領が北朝鮮に強硬に出た三つの理由

   こうした北朝鮮の軍事的挑発を受け、トランプ大統領は「これ以上、米国を脅さない方がいい。世界が見たこともないような炎と怒りに直面することになる」と異例の強い表現で警告した。しかもその後、「炎と怒り」では「言葉に厳しさが足りなかった」と述べ、11日には「軍事的な解決の体制は整った」と発言している。理性的とはとても言えない北朝鮮が、一連のトランプ大統領の言動に対して「理性を失っていると」批判したとのことだが、トランプ大統領の強い発言の背景には大きく言って3つの理由があると考えられる。

   まず一つ目の理由は、実際、北朝鮮の核ミサイル開発を阻止するため、先制攻撃も辞さないと考えていることだ。確かに、時間が経てば、北朝鮮の核能力が向上し、阻止することが事実上困難になる。従って、今米国は、軍事力を使って核ミサイル開発を阻止するか、核保有を容認するか、時間的に選択を迫られている(この選択を迫られているのは、実際は米国だけではなく、日本などの国際社会全体も同様なのだが)。そしてもし、核ミサイル開発を阻止する選択肢をとるのであれば、それは早い方が合理的である。一方で、核保有を容認するのであれば、北朝鮮の横暴を認めることとなり、国際社会は対北朝鮮政策やNPT体制に関しての理論を根本的に転換せざるを得ない可能性も生じる。また北朝鮮が核ミサイルを保有すれば、テロリストに拡散する恐れもある。従って、北朝鮮がグアムに攻撃をしなくても、核ミサイル開発を続ければ、米国が核ミサイル除去のために核施設などを先制攻撃することは、安全保障上、十分理にかなっていると言える。

   二つ目の理由は、北朝鮮の攻撃を支持する国内世論の存在がある。北朝鮮が米本土に届く弾道ミサイルを持つに至ったことで、米国民の間では警戒感が高まっている。8月9日に発表されたCNNの世論調査によると、米国民の62%が北朝鮮を「脅威」と認識しており、軍事行動を支持する米国民も55%に達している。しかも、共和党支持者の間では、実に74%が北朝鮮への軍事行動を支持する結果となっている。国内におけるトランプ大統領の支持率が38%と過去最低水準と言われる中、「トランプ大統領にとって北朝鮮問題は、国内の不満を外に向けるという意味で、これ以上ない好材料だ」との指摘もある。実際。就任直後に低支持率であったブッシュ大統領が、9.11と対テロ戦争をきっかけに支持率をV字回復させたこともあり、歴史的には戦争や外敵を理由に国内の対立を克服し、政権基盤を築いた指導者は多い。従って、北朝鮮への軍事行動を支持する国内世論の存在が、トランプ大統領の強気の発言の背景にあると思われる。

   三つ目の理由は、「米軍・軍需産業界からの期待」である。8月14日産経新聞は「米軍需企業の株価急上昇 北朝鮮緊迫化で業績期待」と題して、「北朝鮮の脅威が増大したことで、米国のほか日本や韓国で迎撃ミサイルの需要が高まり、業績が伸びるとの期待が背景にある。」と報じた。記事によれば、北朝鮮が7月4日に初めて大陸間弾道ミサイルを発射してから、実際ロッキード社の株価は8%以上上昇し、最高値を更新。トランプ米大統領が今月8日、米国を脅せば「炎と怒りに直面するだろう」と警告するなど米朝の応酬が激化するのに伴い、株価の上げ幅も拡大した。ノースロップ・グラマンやレイセオンの株も買われ、最高値を更新した。

   また、この北朝鮮のミサイル問題を、米軍がミサイル防衛システム(MD)の絶好の試験台と捉えているとの指摘もある。北朝鮮がグアム近辺の海に4発のミサイルを着弾させると予告している今回のケースは、限りなく実戦に近い状況で、米軍のMDを試す機会になり、また、米軍にとってMDの有効性を試すテストを行うことは、北朝鮮に対してだけでなく、ロシアや中国、イランなどをも念頭に置いた国防計画において意味があるという意見から、北朝鮮のミサイル攻撃を好機とさえ捉える考えも、米国の中では存在するのである。

 

 

中国が初めて本気で動いた

   いずれにしてもトランプ大統領の強い言動は、中国を動かしたという点でも非常に大きな意味を持つ。

   トランプ大統領は、「炎と怒り」発言を北朝鮮に向けて行う一方、依然として北朝鮮に効果的圧力を加えない中国に対しても強硬に出ている。8月14日、中国による知的財産の侵害などをめぐる問題で、関税の引き上げなど一方的な制裁措置を発動できる通商法301条の適用を視野に入れた調査の手続きを始めるよう求める大統領令に署名した。

   先にも少し述べたが、昨年の北朝鮮の対中国貿易額の割合は9割を超えている。つまり、いくら日本や米国が経済制裁をしても、中国の存在がある以上効果がないことが指摘されてきた。しかも今年、中国と北朝鮮の貿易額は第1・四半期に40%近く増加したこともわかっている。従って、米国も国際社会も中国の役割を重視し、中国の行動を変えなければ北朝鮮の核ミサイル開発は止められないという結論に達していたのである。

   そこで、トランプ大統領が、先に述べた通商法301条の適用に向けて行動を起こしたことは言うまでもない。トランプ大統領の行動は、これまでに無い強いものだと言える。そうした状況から、いよいよ中国も北朝鮮に対し、本気の経済制裁に乗り出した。中国商務省は14日、北朝鮮からの石炭、鉄、鉄鉱石、海産物などの輸入を15日以降、停止すると発表した。また、中国の王毅外相は15日、ロシアのラブロフ外相と電話会談し、21日から始まる米韓の合同軍事演習を念頭に、対立回避へ向けて協力を呼びかけたことが報じられた。これまでの中国からすれば劇的変化である。そして、これらはトランプ大統領の強い言動から導き出された状況であることは言うまでもない。

 

 

国際金融犯罪による資金調達の可能性

   一方で北朝鮮にとっては、もはや中国の経済制裁も効果がなくなりつつあるのではないかという指摘もなされるようになってきた。それは北朝鮮が「金融犯罪」によってミサイル開発やテロ工作の資金調達を行っている可能性があるからである。

   昨年2月、バングラデシュ中央銀行がサイバー攻撃に遭い、8100万ドル(約92億円)が盗まれるという事件が発生した。当初は、犯罪組織による国際金融犯罪だと思われたが、今年5月10日、米国の情報セキュリティー会社「シマンテック」の上級ディレクター、ジェフ・グリーン氏が、連邦議会上院の国土安全保障委員会で開かれた公聴会で、「北朝鮮がバングラデシュ中央銀行にサイバー攻撃を仕掛け、8100万ドルを盗み取っていた」と証言した。また、同様の被害はベトナムなど30カ国以上で確認されており、グリーン氏は北朝鮮がバングラデシュ以外でも「銀行を攻撃している」との見解を示した。シマンテックは、3年前に北朝鮮がソニー・ピクチャーズエンタテインメントにサイバー攻撃を行ったものと同じ有害なコードがバングラデシュの銀行での攻撃に使われたと指摘している。

   こうした状況を見ると、中国がようやく経済制裁に動いたことは、確かに既に時遅しかもしれない。北朝鮮は核ミサイルを開発するための資金調達を既に終えているか、新たな資金調達方法を得ている可能性があるのだ。

   しかしだからといって、今から経済制裁をやめるべきだということではなく、多方面における、かつ国際社会全体でより一層協力をした対策が必要であるということである。とりわけ先に議論になった「国際組織犯罪防止条約」などに基づき、加盟国と協力して国際金融犯罪の取締りを強化するなどの対策が必要であろう。

 

 

強硬路線が北朝鮮の譲歩を引き出したという現実

   米国はこれまで、20年以上にも渡って「戦略的忍耐」とも呼ばれる、かなり譲歩した政策を取ってきた。例えば、1994年に北朝鮮と結んだ「米朝枠組み合意」は、北朝鮮に核開発を諦めさせる代わりに、日韓が費用を分担して軽水炉を建設し、完成まで重油も提供する合意だった(日韓が費用を分担する当該枠組みは、それはそれで別の問題がある)。

   しかし、そこまで譲歩しても、こうした「戦略的忍耐」と呼ばれる甘い北朝鮮政策は、全く意味のないものであった。北朝鮮はその後も核開発を続け、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れないどころか、IAEAから脱退し、合意は水泡に帰した。北朝鮮には、譲歩や甘い政策は意味をなさないということが、この20年で証明されたと言って良い。

一方、今回のトランプの強い言動は、そうした北朝鮮から「譲歩」を引き出しつつある。事実、トランプ大統領の「炎と怒り」発言を受けて、北朝鮮の金正恩は「米国の行動や態度をしばらく見守る」と強硬路線を換え、グアムへのミサイル攻撃を見合わせる選択をしたことが既に報じられている。そうした金正恩の「譲歩」を受けて、トランプ大統領も今度は「金正恩委員長は非常に賢明で、理にかなった判断を下した」とし、「別の選択をしていれば、壊滅的な結果をもたらしていたし、到底容認できなかった」とコメントした。

   また、8月21日から始まった米韓軍事演習に関して、当初北朝鮮は「我慢にも限界がる」とし「予測や想像が不可能な無慈悲の物理的行動をとる」と軍事的措置を仄めかしていたが、現在のところ北朝鮮が取った行動は、「長中距離弾道ミサイル発射」ではなく、「短距離ミサイル発射」でもなく、「3発のロケット発射」で、しかもグアムではなく日本海に撃ったものであり、いずれも失敗だとの分析だ。また今回の「飛翔体」の発射は「弾道ミサイル」ではないので「安保理決議違反」でもない。つまり北朝鮮は、国内の不満を解消しつつ、米国を刺激しないように最大限の注意を払って行動していると言える。こうした行動からも、やはり米国の強い言動が、金正恩の「譲歩」を引き出していると言って良い。

   しかし一方で、北朝鮮が核ミサイル開発を断念したわけではない。そしてトランプ大統領は、北朝鮮が更なる核ミサイルの開発を辞めなければ、軍事行動も辞さない構えを崩しておらず、事態はいつでもエスカレートする可能性があるのは事実だ。

   北朝鮮が核ミサイルを開発し、量産する体制を整えれば、もはやどこの国も手出しできなくなる。そして、核ミサイルが北朝鮮を通じて、他国やテロリストなどに拡散する可能性もある。こうした状況を打破することは、まさに日本を含めた国際社会の喫緊の課題だ。そしてそうした事態を打開することができるのは、国際社会の北朝鮮に対する「強い言動」だということが、これまでの北朝鮮を見ると明らかだろう。

 

 

「外交のソースは軍事と援助」

   国際政治学では「外交のソースは軍事と援助しかない」と言われる。確かに歴史上は、理想や道義が他国の賛同を集め行動を変えることもあるが、往々にして自国の有利なように外交を展開しようとしたら、軍事力という「ムチ」によるか、援助という「アメ」を与えることが最も効果的で現実的だという考え方である。これまでの行動を見ると、確かに北朝鮮はまさに、軍事か援助でしか動かない国だと言える。

   北朝鮮が「譲歩」や「謝罪」をした過去の事例を見ても、そのことは明らかだ。例えば、2002年北朝鮮金正日が日本人拉致を認め謝罪し、2004年に8人の拉致被害者が帰国した際、同時に当時の小泉純一郎首相から、人道支援として25万トンの食糧支援と1000万ドルの医療支援が表明された。どう考えても、経済支援が拉致を認め謝罪したことと無関係ではない。

   また大前提となる国際情勢として、拉致を認め謝罪した2002年という年は、2001年の「9.11」を受け、テロとの戦いを宣言した米国が、イラク・イランと並べて北朝鮮を「ならず者国家」として制裁を加える旨宣言していた時期であり、米朝関係の悪化という背景も日朝接近の原因となったことは言うまでもない。つまり拉致被害者の帰国は、「軍事と援助(アメとムチ)」の結果であったと言えるのである。

   また最近では、2015年8月、南北朝鮮が対立する軍事境界線を境界線とした非武装地帯で地雷が爆発して韓国軍兵士が負傷した事件において、北朝鮮を批判する韓国国内の世論の拡大に押され、韓国政府が北朝鮮に謝罪と責任者の厳重処分を強く求め、それがないと「政府は必要な措置を講じる」とまで述べると、北朝鮮は「遺憾の意」を表明し、事実上謝罪した。

   今回、トランプ大統領の強い言動で譲歩したところを見ても、結局のところ北朝鮮は、対話による説得では無く、軍事的圧力などの強い言動でしか譲歩しないことが分かる。

   「外交のソースは軍事と援助」という歴史的な外交の現実を踏まえて、経済援助で効果がないなら軍事的な行動も視野に入れることを日本も考えられるように今後の安全保障体制の整備が必要だろう。拉致問題を見てもそのことは明らかだと私は考える。

 

 

迎撃ミサイルシステムの課題と限界

   日本はこれまで北朝鮮などのミサイル攻撃に備え、迎撃ミサイル(ミサイルディフェンス:MD)の配備に力を入れてきた。防衛省の予算は5年連続の倍額要求だが、それはミサイル防衛の増強に力を入れてきたことによる。

   現在、日本のミサイル防衛システムは、イージス艦に搭載した海上配備型迎撃ミサイル(SM3:高度100キロ以上の大気圏外で迎撃する)と、地上配備型の地対空誘導弾パトリオット(PAC3:高度十数キロの大気圏内で撃ち落とす)の二段構えをとっている。

   しかし、北朝鮮がここ最近、ミサイル技術を進展させたことにより、日本の迎撃システムの無力化が指摘されている。例えば、北朝鮮は最近移動式発射台から前兆なくミサイルを撃つため、兆候を把握しにくくなっていること(しかも10分以内に着弾する)、そして、北朝鮮がミサイルを通常の軌道よりも高く上げて近くに落とす撃ち方(「ロフテッド軌道」と呼ばれ、高く上がった分だけ落下速度が増し、今のシステムでは迎撃は難しくなると言われる)を取るようになったことなどである。また、そういったミサイルでなくとも量産し、一度に撃たれた場合でも、対応が非常に困難となる。

   当然日本もこれに合わせて、通常よりも高い軌道で飛来するミサイルに対応する海上配備型迎撃ミサイル「SMブロック2A」やPAC3の防護範囲を2倍に広げる改良型、そして最新鋭の地上配備型迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の取得といった迎撃システム向上に力を入れているが、大事なことは、米国に払う武器の購入費も膨大で、また、どれだけミサイル防衛の強化を行っても、北朝鮮が対策を講じるため「イタチゴッコ」になっているということだ。つまり、ミサイル防衛にも限界があるということである。

   米国が20年以上北朝鮮に譲歩する政策を取ってきたことは既に述べたが、これは北朝鮮の存在により、日韓が在留米軍を受け入れ、有事を想定し迎撃ミサイルなど高額な兵器を購入するなど、米国にとって利益を産む状況であったからとの指摘がある。米国にとって北朝鮮が直接的な脅威になら無いのであれば、「必要悪」として存在させていた方が、国益にかなうというものだ。残念ながら、日本にとってはMD構想を続ける限り、非常に高額なミサイルを更新し続けなければならないため、米国に膨大な費用を支払い続けなければならない(これはまた別の問題だが)。

 

「敵基地攻撃能力」を持たないと、防衛も外交も出来ない

   そこで、これらの問題を解決する方法が、「敵基地攻撃能力」の保有である。

   今月4日、小野寺五典新防衛大臣が、「敵基地攻撃能力」の保有について前向きな見解を示した一方、6日には、安倍総理は「現時点で具体的な検討を行う予定はない」と述べたことが報道された。しかし、これまでも述べてきたように、日本が「敵基地攻撃能力」を持つことは、もはや必要不可欠であると私は考えている。

   これまでの政府見解でも「攻撃を防ぐのにやむを得ない必要最小限度の措置として発射基地をたたくことは自衛の範囲」となっている。つまり「敵基地攻撃能力」をもつことは憲法上認められているということであり、法的に問題はない。日本国民を守る決意があるなら、この「敵基地攻撃能力」を可能な限り早く整備すべきだと私は考える。

   ここまで、核ミサイル問題ばかり述べてきたが、日本には北朝鮮との関係で長年悩んできた「拉致問題」がある。これまでどれだけ話し合おうと、経済支援を表明しようと、「対話と圧力」と称して経済制裁を加えようと一向に進展しなかった。それは、端的に言って、日本が軍事的に全く脅威ではないからである。一方で米国に固執し、米国の言動に左右されるのは、米国が北朝鮮にとって軍事的に最大の脅威となりうるからだ。

   8月10日、ロシアが北方領土で1000人以上の兵士が参加する軍事演習を開始したと発表した。択捉島と国後島の演習場で実施しているもようだ。北朝鮮の脅威を理由に、北東アジアでの軍事力を強化する米国を牽制する狙いだと報じられているが、ここでも日本は配慮すらされていない。北方領土で共同経済活動を行い両国の信頼関係を築こうとしている矢先に、である。ロシアにとっても注視すべき最大の相手は、決して日本ではなく米国だということを意味している。

   良いか悪いかの価値判断は別として、現実主義的に考え、どう考えても日本の外交防衛体制を強化するために、「敵基地攻撃能力」保有の議論を具体的に始めるべきだ。