OGRE YOU ASSHOLE『WORK SHOP』 | MUSIC TREE

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邦ロックを中心に批評していく
音楽ブログです。更新不定期。

ーThe escape from the work-shopー

ループし続ける音の洪水が、気がつけば螺旋のように上昇していく。

本作はlive soundを一枚の『WORK SHOP』という作品として生み出したものである。
ライブ・サウンドという、何の編集も無く、途切れることのない音楽の行進を生み出す行為、そこにあるのは本来の音楽が持ち得るダイナミズムという荒波だ。つまりこの作品は、それを音源として体験することの一端を担うものであり、タイトルのワーク・ショップも、いうなれば”体験する場所”という意味として捉えることが出来る。
 生の音を伝える作品を彼らが作った理由は、もちろんライブ・バンドとしての評価や自負があるからなのだろうが、もう一つの意味は、僕たちが体験しているものが本当のリアルな音楽か?という、疑問符の投げかけでもあるんじゃなかろうか。継ぎ足しや加工が容易になったデジタル化社会では、生の音楽を取捨選択していくのは難しいし、そうする意味があるのかもわからない。

ループし続ける音の洪水が、気がつけば、螺旋のように上昇している。

彼らが見せる風景とは、活動拠点の長野から見た、東京という街を対象にそれをデフォルメした世界であろう。
「見えないルール」や「ムダがないって素晴らしい」などの曲名には、その世界というものに対しての静かな批評が隠されているようだ。
本作題名の”Work Shop”からは、現実の体験を避けて陳腐な体験コーナーに成り下がった、”ペーパークラフト”的な都市に対しての冷めた視点を感じてしまうのだ。
 また、サウンドから感じられる海外のロックとの隣接点は、自ずと日本らしさの追求へと変貌していく。音楽的な追究を、海外の方法論へどこまでも触手を伸ばそうとも、根っこは母国、長野の地中に埋まっていることをありありと感じことが出来る。とくにメロディがセンチメンタルな側面に振れた時にその傾向は強くなる。
 この『WORK SHOP』とは、リアリティを体験せずに満足している人たちのドアをノックする為のもの。体験コーナーという滑稽なモニュメントを白々しく作り出す社会への警笛。
だからこそ、音の一瞬一瞬を途切れさせない”live sound”である必要があったのだ。

ループし続ける音の洪水が、気がつけば、螺旋のように上昇していた。

もちろん、この作品がリアルであるかは、彼らの本当のライブに答えがある。そう、宇宙から地球を見たいという思いと同じ様に、らせん階段を上がってどんな現実が見えるか体験してみたくは無いかい?
そうするにはまず、この『WORK SHOP』から抜け出すしか無いのである。






workshop/OGRE YOU ASSHOLE

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