MUSIC TREE

邦ロックを中心に批評していく
音楽ブログです。更新不定期。


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僕の最近のグレイプバインのイメージと言えば、例えば、履き古されて美しいインディゴを残しているジーンズだったり、先代から受け継がれたぬか底で作られた漬物のようなものだ。

後者的に言えば、まさに音、味のしみこみ具合が絶妙であるし、決して派手ではないが、ごはんには最高のお供だと思う。この場合のごはんが僕にとって、あなたにとって、人生において何を指し示すかは想像に任せようと思う。そして、あのボリボリとした食感の素晴らしさこそが、漬物の醍醐味であると言えるだろう。
それはまるで、体中を駆け巡る生を持ったグルーヴのように。とにかく玄人的だと思う。デニム職人にしろ、漬物屋さんにしろ。それはある種、余裕があるみたいに、さらっとこなしているように見える。出来る職人は多くを語らない。まさに僕が昨年、初めて見たグレイプバインのライブはそういった類のものだった。

そして、最近の僕としても、テンポの速い、縦ノリのロックではなく、横ノリのものを好む(もう10代の頃みたいにジャンプできないだけかも)。だから去年のライブも正直すごくよかったと思う。”流転”、”MAWATA”などの静かに徐々に増していく興奮に身をゆだねるのも悪くはない。
しかし、やはりロックはもっと肉肉しく、激しくなければいけないというイメージが付き纏ってしまう。
要するに、分厚いステーキにかぶりつくような、もっとわかりやすい生きてる感覚がほしかった。

その意味で言えば、非常に攻撃的で肉肉しいセットリストであったと思う。
最新作『BABEL,BABEL』は個人的には名盤『イデアの水槽』以来の革命であると考えているが、やはり、このタイミングでライブを見に行ったのは正解だった。
メインディッシュとしての肉が主役を担いながら、漬物のおいしさも引き立ててくれるような・・それはもはや、ロック云々ではなく、実に多種多様な音楽が入り乱れた-言うなれば、敷居の高くないフルコース料理のような満足感であった。


ライブは、比較的、早い整理番号で入場。会場にて、偶然にも先輩のROHITOと再会するというドラマもあった。先輩と話しながら開演を待つ。話題はやはり音楽、グレイプバインが中心。最新作『BABEL,BABEL』の名盤性を二人でしっかり確認し合った。

そうこうしている内に、暗転。静かに登場しながら、まず田中の短いヘアスタイルに気付く。こんなに短いのはいつぶりだろう。何かの決心の表れだろうか?それから、田中がまさに何も話すことを、考えてなかったみたいに「しゃちほこがいっぱいおりますな~」とつぶやく。名古屋でライブをする歌手は「しゃちほこ」、「味噌カツ」、「手羽先」、「きしめん」以外の語彙力を身に着けてほしい。

最新作『BABEL,BABEL』のラストに収録されたナンバー”TOKAKU”からスタート。序盤からの明るい選曲に会場も逆に困惑したような様子だった。続く、”HESO”、”EVIL EYE”もまた比較的、激しいナンバーであり、一気に客もノリだす。



昨年のモードとは違うグレイプバインを会場全体が、肌で確信したのは、このあたりからだろう。音楽は続き、しっかり盛り上げた後はゆるやかな空気に。最新作より”SPF”、色あせない名曲”風待ち”など、どこか夏を意識したセットリストが展開されていく。

それにしても、”SPF”は本当にいい曲である。グレイプバインが得意とする夏のにおいが閉じ込められている。地味なグッドメロディを何度も何度も重ねることによって、歌詞の持つ意味合いを際立たせるという最近のグレイプバインでよく見られる手法である。「どうか急いで どうか終わらないで 思い出になってどうなるの」という歌詞が本当に僕は好きだ。思い出はいつもきれいだけど、それだけじゃおなかが減ってしまう。もっとちゃんと今、追いかけなくてはいけないものがきっと皆にある。思い出にしないために今追いかけて、生きたい。



個人的には狂おしいほどに以前から聞きたかった”REW”を演奏してくれたことがうれしかった。充満していく夏のにおい、そしてゆるやかな風がライブハウスに確かに流れていた。その風は流れを生み出すかのように、以降も最新作からの選曲を中心に、ゆるやかな空気が広がっていった。

そしてこの日一番のハイライトとなったのも、最新作からのナンバーである”GOLDEN DAWN”であった。グレイプバインには珍しく、ここ数年、世間では定番化した四つ打ちをベースにした変な曲である。そう、すごく変。イントロから気持ち悪いし、歌詞も源氏物語とか出てくるし、意味が分からない。アルバム内では序盤のいいスパイスくらいに感じていたのだが、ライブでは圧倒的なキラーチューンに変化していた。それは明らかにこの日、最高のダンスミュージックであった。
特に間奏部分では、Daft Punkの”One More time”、クラフトワークの”The Robots”をマッシュアップするという予想外の展開を見せた。そこから、さらに会場のボルテージはあがっていく。終わってみれば、グレイプバインでこんなに飛び跳ねたのは初めての経験であった。この日の僕は「腕組みでもしながら、田中の彼氏面をして、じっくり見よう」と思っていたのに、体はやはり正直であった。

熱を冷まさないように、直後、”I must be high”、”HEAD”、”Scare”、”CORE”と熱いナンバーが続いた。特に”CORE”では、心身がトリップしたかのような異常な感覚が僕を襲った。足でステップを踏みながら、首をぐるぐる回した。ああ、音楽はこんなに気持ちいい。快感に溺れ、頭がぶっ飛んで、昇天しかけた頃に最後の”Heavenly”のイントロが流れだす。熱くなった身体が気持ちよくチルアウトしていくのがわかる。

「笑わないで 一度だけ言う 君を愛してる」・・そう歌う田中にはまるで、こことは違う神秘的な世界が見えているようだった。きっと僕らと見ているものは違うけど、天使の羽のようなものが僕には見えた。「神」という言葉を軽々しく使いたくない僕でも、今日だけは言わせてほしい。まるで音楽の神様が舞い降りたみたいな、美しい夜だった。

幕引き。音が鳴りやんだ瞬間の余韻、拍手でもうわかった。これほどまでに観客全員が満足するライブってなかなかない。そこには強制的なアンコールは存在せず、素直に「もう一度見たい」という欲望だけがあった。数分後、Tシャツを着替えた田中が登場。えんじ色のツアーTがよく似合う。カップリング二曲を挟み、”真昼の子供たち”を演奏。ピースフルな空気が満ち溢れていく。

前作『Burning Tree』では田中の死生観や内省な部分が露出していたように思えたが、最新作ではその先の未来へ伝えていきたい愛のメッセージのようなものを僕は感じていた(非常に遠回しに、そしてミニマムな表現ではあったが)。そういった流れの中で、この”真昼の子供たち”もまた、一層、力強いポップスへと変化していることを感じた。そんな素晴らしい夜の終幕に最大限の拍手を送ろうとした瞬間、まるでボーナストラックみたいに始まった最後の”アダバナ”もまた素晴らしかった。

気持ちよく終わった。文句の付けどころのないライブであった。




それにしても、いつも思うのだがグレイプバインは本当に程よく売れている幸せなバンドであると思える。幸せのあり方は、人それぞれではあるが。20年以上続きながら、ライブも作品もしっかりと評価され、名古屋のような地方でライブをやってもキャパに対してほぼ満員で客が入る。アルバムを出せば、ちゃんとオリコン10位くらいには入る。そして何より、そこに集まる客の質が非常にいいと僕は思う。
「○○好きに悪いやつはいない」だなんて言いたいわけではない。ライブハウスにおける自由が不自由であることを理解し、ちゃんと音楽に合わせて、体を動かし、楽しむ正直者ばかりが集まってくる。野蛮人もいないし、集団行動を強制する奴もいない。ただの音楽が好きな変態だけが集まってくる。僕はあの空間がたまならく大好きだ。

グレイプバインは本当にとってもいいバンドである。速いテンポが好きな若者には理解できないかもしれないが(事実、僕だってバインのことは10年前から知っていたけど熱心に聞いていなかった)ロックンロールのすべてが、音楽のすべてがつまった素晴らしいバンドであると僕は考えている。まずは、最新作『BABEL,BABEL』から聞いてみるのもおすすめである。

この素晴らしき音楽が、少しでも多くの人に届きますように。

~参考~
セットリスト 
GRAPEVINE「BABEL,BABEL」特集 田中和将×斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN) 音楽ナタリー Power Push

BABEL, BABEL (初回限定盤)/ビクターエンタテインメント
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