beyond 400 | さまようブログ

beyond 400

 綾里の観測地点で、日本では始めて二酸化炭素濃度が400ppmを超えたとの報道がありました。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120516-00000100-jij-soci 

 
日本の観測地点の二酸化炭素濃度変化(上段)。気象庁HPより。


  とはいえ、日本の観測地点では初めてというだけであって、海外に目を向けると、北半球の高緯度地域では400ppmはとっくに過ぎ去っている地域もあります。400という数値は象徴的ではありますが、特に重要な画期というわけでもありません。


 ドイツ、NeuglobsowのCO2濃度経年変化。温室効果ガス世界資料センターHPより。2006年頃には400ppmを上回るようになっている。



 さて、この400ppmという値は、歴史的に見るとどの程度の濃度なのでしょうか?まずは、直近40万年を見てみましょう。南極のアイスコアから再現した値で、これはかなり信頼性が高いデータです。


 wikipediaより。過去40万年の間、大気中の二酸化炭素濃度は常時300ppm以下。400ppmという値が、ここ40万年の間ではいかに異質かがよく分かります。


  では、さらに過去はどうでしょう?新生代(約6,500万年前~現在)の歴史を見てみます。ただし、ここまで遡ると氷床コアのデータを得る事ができなくなり、推定にかなりのバラツキが発生します。                 

                         
 doi:10.1038/ngeo1186より。 ここ2,000万年ほどの二酸化炭素濃度は250ppm程度でかなり安定していましたが、約500万年前と約1,700万年前に400ppmに迫る(あるいは上回る)濃度だったことが分かります。何より、2,500万年より昔はかなり濃度が高く、1,000ppmを超えていた時期すらありました。そしてこの時期(新生代前半)は地球の平均気温がおそらく現在よりも10℃以上高温で、両極に氷床は存在しなかったと思われます(過去記事参照)。


  さらに過去、5億年分を見てみましょう。
過去記事から再掲します。

 
約5億年分の二酸化炭素濃度変化。global warming artより。

 中生代には、二酸化炭素濃度は数千ppmに達していた時期があると推定されます。もちろんこの時期の地球は非常に温暖で、極地に氷床などありませんでした。



  ここまで見ると「400ppmという値はたいした物ではないのではないか」と思われるかもしれません。実際、ネット上ではそのような意見が散見されます。しかし、残念ながらそれは誤った考え方です。
 確かに400ppmという値そのものには大した意味はありません。わずか30年の間に二酸化炭素濃度が50ppmも増加した、その変化にこそ脅威があるのです。そして、その増加は今後も続きます。
 熱帯にも大都市があることから明らかな通り、現代文明は高温そのものには十分対応できます。しかし、現代文明は気候の「変化」に対しては対応が難しいのです。「二酸化炭素濃度が高いこと」ではなく「二酸化炭素濃度が上昇し続けていること」、「地球が温暖であること」ではなく「地球が温暖化しつつあること」、その変化が大いなる脅威であることを認識してもらいたい、と思います。