温暖化の原因を海水温に求める | さまようブログ

温暖化の原因を海水温に求める

 地球温暖化の原因を人為的な温室効果ガス以外のものに求めたがる人は結構います。その候補としてよく上るのが海水温の変化。たとえば

http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100708/1278644370

 のFig.2などですね。PDO(太平洋10年規模振動 )という現象があります。原因は良く分かっていませんが、太平洋各地の水温が約20年周期で変動しているというものです。これが原因ではないか、と。

 まあ、このFig.2については、『「温暖化の気持ち」を書く気持ち』さんが、「ただのコピペじゃないか」と書かれている通りでお話にならないものだと思いますが・・・。

http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100716


 ただ、査読つきの学術誌に、海水温の変化が温暖化に大きく寄与していると主張する論文が掲載されたことがあります。

http://www.agu.org/pubs/crossref/2009/2008JD011637.shtml/quote

 SOI(南方振動指数)というものがあります。SOIはエルニーニョと密接な関係がありますが、エルニーニョ発生年には全球平均気温は上昇する傾向は確かにあります。この論文は、地球温暖化そのものにもエルニーニョが関与していると主張しているもの、と言っていいでしょう。温暖化のうち72%はSOIで説明できるのだそうです。


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図1:過去のエルニーニョ発生時期。赤い影の部分がエルニーニョ発生年。1973年・1983年・1998年など、顕著なエルニーニョ現象が発生した年は全球平均気温は高い傾向にある。気象庁HP より。



 ところが、「よく見たらこの論文は無茶苦茶じゃないか!」という論文が、同じ雑誌に掲載されました。

http://www.agu.org/pubs/crossref/2010/2009JD012960.shtml

 正直、私にはこれらの論文を十分に理解することはできませんが、McLeanらの論文は、6年以上の長期変動を除去しているのだそうです。これが本当なら、「長期変動を見ようというのに何をやっているんだ?」という話になります。

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図2:SOIの変動。6年以上の長期トレンドを考慮しないなら黒線だが、トレンドも入れれば赤線になる。McLeanらは、長期的な温暖化傾向の原因を探る際にトレンドを除去するという致命的な誤りを犯しているとのこと。UCARに掲載されたsubmitted版 より。

 
 new scientist 誌もこの件を紹介しています。また、このような指摘は、環境問題補完計画さんもずいぶん以前にされていました(今回の問題とはちょっと意味合いは違いますが)。

http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/38497532.html

http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/38597814.html

 長期的な変化と短期的な変化が合成されて実際の変化が起きるのですが、どちらか一方だけに着目してしまう、という傾向は人間誰しも持っています。月並な結論ですが、多面的に物事を考えることは重要なのですね。


 今のところ、PDOにしろENSOにしろ、海水温の変動により地球温暖化は説明できるという説は根拠に欠けることは間違いないと言えるでしょう。