デーブ・フィンレーの衝撃、
基本的な動きから随所に繰り出される変化球はコロンブスの卵の発想で、ホンロウする対戦相手を確実に痛めつける。
奴の一挙手一投足、いや、表情、眼球の色さえもが、オーディエンスを自らのペースに引き込み、魅了して離さない。
・・・震えた。
レスラーの多くは、会場の沈黙を嫌い、動きを止めることに躊躇いを感じるものだが、
奴は、静止した、自ら沈黙を創った。
しかし、その時、オーディエンスの総ての眼は好奇心と共に、奴が差し出した指先に注がれるのだった。
サイコロジーという言葉、プロレスが芸術だという言葉が今まで随分と不用意に使われて来た事を俺たちは悔やんだ。
しかし、今、奴に出逢えた衝撃に涙する。
こんな言葉を想いだした。
「イギリスの舞台俳優はハリウッドで活躍する奴らから恐怖と尊敬の意で見られている」と。
俳優養成所に通っていた頃にアクティングコーチが度々言っていた言葉だ。
ヨーロッパ文化の中でレスラーとして闘いつずけた奴のポリシーがそこに有るのかもしれない。