発売からもう2週間たったのかな、アルバム「⊿」に関してそれぞれの曲に感じた第一印象を小ネタのように書き散らかしてきたけど、ようやく気持ちが落ち着いて正面から向き合えるようになった気がする。


書く。


今回のアルバムに収録されたシングルのリード曲は3曲、cw曲が2曲、計5曲。

ちょっと多い。


「edge」や「願い」のように人気の高いcw曲を、リミックスして収録したくなる気持ちは分かるけど、それならリミックスアルバムを出すという手だっていつかは使えるのだから、アルバムを出すならなるべくアルバムオリジナルの曲数を増やしてアルバムごとの世界観を明確に示して欲しいな、と思う。

それが課題と言えば課題。


アルバム「GAME」は、とても質の高い幕の内弁当だった。

アルバム「⊿」は、一つのメニューの中で色々な種類の料理を味わえる優れたセットメニューだ。


これらのアルバムには、Perfumeが成長する道程が律儀に収められている。


時間ごとに変化する彼女達のイメージを追い続けるように、リードするようにサウンドが作られている。


20歳前後という、1日目を離しただけで雰囲気が変わって見えるような変容の激しい季節に生きる彼女たちをイメージしたサウンド作りは、誠実でリアルな模索だ。


色々なサウンドを、これでもかと詰め込んだアルバム「⊿」は、カラフルでゴージャスで、とても気持ちのいい軽やかさを感じさせる。

傑作である。

20歳を迎えたPerfumeの現在を表わす里程標であり、歌手としてのPerfumeの潜在能力の高さがいかんなく発揮された名曲揃いである。


Perfumeの音楽が、もっと先に進めることが証明された作品だ、と思う。

重低音に頼らない軽やかなサウンドでも、ベタなメロディでも、メインストリームに沿ったスタンダードなサウンドでも、Perfumeは十分という以上のクオリティを保証できる。


既発シングル曲が描くのが日常であるなら、アルバムオリジナル曲が描くのは日常からの脱出だ。

だからこその、浮遊感。


脱出は、逃亡ではない。

彼女たちはお行儀良く午前、午後のひと時を過ごし、ある時間を過ぎると、深夜の空へ飛び立つ。


空の上で恋に落ち、日常の責任感から解き放たれ、深い絶望を味わい、それでも最高の何かと出会い、幸せの名残りを心に収めて、ささやかでリアルな自分の住処「ワンルーム」に戻っていく。

何かを願わずにはいられない、重い現実を抱えた世界へ。


アルバムを聴き始めた我々がまず見ることになるのは、彼女たちが離陸して向かう先は、浮遊感に漂う非日常の世界ではなく、重しを抱えた現実の世界だ。


現実の中で彼女たちは愛を語り、夢と向き合う。


「最高を求め」「新しい世界を見た」い、という彼女達の夢は、非日常の世界でだけ叶う。

最高の何か「The best thing」と出会ったはずの彼女たちは、しかし、あっというまにささやかでリアルな住処に引き戻される。


ループ。

繰り返し。

エンドレス。


まるで、我々が過ごす日常のように、同じような情景が反復される。


アルバム「⊿」の世界は、そこから感じられる統一感の欠如は、もしかしたらこの世界が客観ではなく主観=誰かのインナースペースを描いているから、こそのものなのかもしれない  ▽・w・▽