考えてみればPerfumeのライブは今後追加公演の5月中旬からさらに最終の地沖縄宜野湾まで約半年におよぶロングツアーとして続いていくことになり、おそらくその間ニューシングルの発売は控えることになるのではないか。
我々にはその間早くも名盤と評価も高い「JPN」があり、もちろん前作、前々作、1stがある。
あるんだけれども、ちょっと寂しいかなという気もする。
Perfumeが半年間に及びツアーを敢行しているとはいっても、我々が参加できるのは運良くチケットが取れ、スケジュールを合わせることが出来、さらに遠征費用などを捻出できたとしてぜいぜい4~5ヶ所。
なかなかPerfumeを観ることは叶わないようだ。
社会人の都合に合わせて週末重視のスケジュールを組んだこともあって、今ツアーは非常にゆったりとしたペースで進んでいく。
最終的には20~22ヶ所くらいになるはずなので、一ヶ月約3~4箇所ずつ。
Perfumeは競走馬で言えば連闘がきかないタイプであり、非日常的な身体の動きを強いられる独特の振り付けは慎重なケアを前提としているはずでもあり、このくらいの間隔は必要で、しかも不可欠だろうと思われる。
となると、やはりPerfumeの新盤を聴けるのは早くても夏の前、ツアー終了後となり、ライブDVDはさらにその後、季節で言えば秋ごろか。
待つしか無いか。
この記事を書いている現在朱鷺メッセでライブ中であるPerfumeは、昨年学業を卒業し、Perfume専任となったことで元々高いレベルにあったパフォーマンスをさらにバージョンアップさせた。
ラジオ番組のインタビューなどを聴く限りでは、ライブがなければダンスにしろ歌にしろ特にレッスンもプラクティスもしていない、ということらしいが、おそらくは個人的にトレーニングジムなどに通っていたのではないかと推測される。
でなければ、あれだけの筋肉の量は維持できないのではないか。
Perfumeのダンスは、フェミニンでありガーリーであり、何よりもキュートなものではあるけれど、ダンスの基本思想みたいなものははっきりとマッチョだ。
強靭な肉体によって形作られるフォルムが求められ、演出家のMIKIKOさんは、自身のカンパニーでの活動を通じてマッチョイズムみたいなものをさらに強化させつつある。
それは、ダンス・舞踊というジャンルの中に元々内蔵された、文字通りの血肉であるからだ。
ただ、我々はなかなかその部分に気づかない。
肉体的な変化は目に見える。
かしゆかは全身にうっすらと良質の筋肉をまといつつあるし、のっちも見事に肉体改造を間に合わせてきた。
あ~ちゃんが痩せて見えるのは、お年頃の娘さんにありがちな安易な発想によるダイエットのせいではない。
PTAにおける画像の中、薄物をまとうような衣装の時など、彼女たちの身体の線は無骨とさえ言えるほど鍛えられて見える。
問題は、そこではない。
身体つきの変化ではなく、Perfumeのダンスの変化だ。
ダンスの変化が、彼女たちの身体つきさえ変化させたのではないかということだ。
元々Perfumeのダンスは歌の振り付けである。
それは、ある意味では現在でも同様であるが、内容が異なってきたように思う。
Perfumeのメンバーは、特に歌うこと、についてのこだわりを持っていて、インディーズ時代、メジャーデビュー後までの間は激しい振り付けと歌うことを極力共存させる方法を選択してきた。
彼女たちの生の歌声が音響装置に反映されず、口パクなどと揶揄されても、彼女たちは歌い続けてきたのだ。
それは、GAME、直角二等辺三角形、各ツアーDVDを観ていただければ分かることだろうと思う。
ライブ会場にいるとかえって爆音のせいで分かりづらいのだが、彼女たちは驚くほど、あの振り付けと歌を両立させようとしている。
Perfumeの振り付けは、生歌歌唱には向いていない方向を選択してきた。
上半身を折り曲げたりするような動きも多く、発声に必要とされる横隔膜の支えや腹筋のある位置での維持、が非常に困難になっていて、さらにMIKIKOさん独特の、細かいリズムのカウントが生歌との両立を困難にしている。
さらに、Perfumeの振り付け=ダンスでは、重要なのは「動き」のほうではなく、「姿勢の保持」なのだ。
たとえば「微かなカオリ」の振り付けは、最近の、他グループの振り付けと比べてさえ、簡単で安易、牧歌的とさえ言える非常にシンプルなものになっているように見える。
しかし、あのひらりとした腕の動きを効果的に見せるために、演者は身体の姿勢を固定させ、保ち続けなければならない。
あの動きを美しく見せるために、肉体を構成する各部位の空間における位置、は絵画のようにはっきりと固定されているのである。
ふらふらと不安定に揺れ動く身体から腕を伸ばして振った、というのとは違う。
ただし、「微かなカオリ」の振り付けでは「姿勢の保持」が、歌うための筋肉の動きを妨げるほどではないため、音源とかぶせた状態ではあるものの、全曲を通じて歌うことが出来る。
しかし、中には歌うことを有る部分で限定的に諦めることで、振り付けを「ダンス」のクオリティまで引き上げている曲もある。
「チョコレイト・ディスコ」や「TSPS」が、その最も早い例だろうし、ブレイク後で言うなら「edge」。
これらの曲のパフォーマンスでは、細かい跳びはねるようなステップや、のべつ幕なしに動き続けなければいけない振付が多く、少なくとも音源に残した歌、のようには歌っていない部分がある。
その他は、というと今でもPerfumeは極力歌うように心がけているではないかと思う。
振り付けが進化して「ダンス」のレベルに引き上がられようとしている今でも。
ダンスを強化するための筋肉を身にまとうようにして。
今回のツアーでは、基本的にステージと観客席の距離は離れている。
大会場を舞台に選んだからであり、それゆえにPerfumeは、ステージ上の音楽をより遠くまで送り届けなければならない。
そのために、各曲のパフォーマンスは以前にもましてダイナミックでしかも繊細な内容を求められ、照明や舞台装置などの演出効果の助けを借りながら、Perfumeは鍛え上げられた肉体を酷使している。
セットリストの刈込とゆったりとしたインターバルは不可欠なものだろうし、ツアーの完走のためにも必要だろうと思う。
あれほどの完成度を見せながら、ツアーはまだ始まったばかりだ。
Perfumeの楽しい音楽と、磨き上がられたステージと、鍛えられた美しい肉体は、何者にも替えて観る価値がある。
見えない角度から襲いかかる打撃のようにあなたを打ちのめす。
どうかその心地よい「不意打ち」を味わってください。
新潟会場の諸君、お疲れ様でした ▽・w・▽