アルバム「⊿」におけるPerfumeサウンドに、今までのイメージとは違う新しい何かを感じ取っておられるファンのみなさん、けっこう多いようですね。


中田さんがPerfumeに提供する楽曲のサウンドが転換期を迎えていて、それがすでに「ラブワー」のあたりから始まっていたんじゃないか、というひげくまさんや、ホンノリまことさんからのコメントによる指摘もあります。


Perfumeサウンドについて発言する時、僕のような楽譜も読めない人間は、こういう風に聴こえていたものが、こんな風に聴こえるようになった、という程度の曖昧な感想を述べることしか出来ません。


また、Perfumeの楽曲について考える時には、サウンド=音、だけではなく歌詞も重要なファクターとなっていますので、それもあわせて考えなければならないんじゃないか、と思います。


Perfumeというユニットは、たしかにアイドル的な側面が非常に強い存在なんですが、それは彼女たちのキャラクターだとか、事務所の売り出し方ももちろんそうなんでしょうが、何より彼女たちがその時その時に歌う楽曲と、彼女達のイメージが分かちがたく結び付いているからこそ、そう感じられるんじゃないか、と思います。


活動全体の時間を計ってみれば、メジャーデビュー後のごく一時期のものでしかなかったはずの「無機質」な雰囲気の「近未来テクノポップユニット」というイメージは、未だに根強くPerfumeにまとわりついています。


ブレイク以降のPerfumeが、特に2008年になってから長い時間をかけて行ってきた20歳前後という年齢相応の、ごく日常的な世界に生きる女の子たちのグループ「Perfume」、へのイメージの転換は、ギリギリのタイミングで功を奏しました。


彼女達のイメージが、未だに芋っぽく、ストイックな雰囲気だからこその「聖少女」なままだったなら、フライデーによるゴシップ記事によるダメージは、もっともっと深刻なものになっていたんじゃないか、と思います。


ファンは、おそらく「マカロニ」PV発表の頃から、Perfumeはいつか子供のように無邪気なPerfumeのままではいられなくなる、ということを少しずつ少しずつ自分自身に、無意識の中で納得させていったんじゃなかったのか、という気がします。


そして、そのイメージの変化、転換の触媒となったのが、Perfumeサウンドそのものではなかったのか、と。

そのことを考える時、ファンと、中田さん+Perfume、という関係だけを考えるのでは、色々と足りない部分が出てくるのではないか、と思います。


楽曲による、或いは楽曲そのもののイメージ、ベクトルの向く先を決めるのは中田さんやPerfumeではなく、アミューズであり、徳間ジャパンコミュニケーションズであり、彼らから依頼を受けて方針を決めるヤマハディレクターチーム、だからです。


中田さんは、クライアントの意向を受けて、その枠の中で楽曲を制作するクリエイター集団の、重要だけれども、一部です。


長い時間、同じ時間、空間をともに過ごした彼とPerfumeの間に特別な絆があるのだろうことは確かなことでしょう。

その絆を愛情、と呼んでもいいのだろう、と思いますし、彼らを結び付けているのが良質な音楽を作ろうという連帯感のようなものだろう、ということもまた確かなことなのだろう、と思います。


ただ、それでも、彼とPerfumeを現実的に結び付けているのはビジネス上の契約事項であり、中田ヤスタカという青年が、自分が感じるPerfumeのイメージを、自由気ままにサウンドに変換できている、とは考えられません。


彼の才能も情熱も、重要だけれども、一部なんです。


ですから、僕たちはPerfumeサウンドについて考える時、Perfumeというユニットのイメージが楽曲の雰囲気、テーマによってどのように変化し、成長していったのか、も考慮に入れたほうが、より分かりやすくなるのではないか、と思います。


もちろん、Perfumeの活動全体の中から、サウンドという要素を抽出して、その点について焦点を絞って考える、というアプローチも成立するでしょう。


そういう面で考えるなら、僕はいわゆる「GAME」サウンドからの脱却は、アルバム「GAME」収録の「Butterfly」や「Puppy love」から始まっていた、だからこその「あ~ちゃんメインボーカル」フィーチャーだったのだ、と思っています。


特に「Puppy love」が、Perfume史上初の、あ~ちゃんセンター据え置きシフトだ、ということを忘れてはならないだろう、と。


ただ、中田さん個人のサウンド転換について考えるなら、やはりそれはPerfumeやMEGさんとの仕事を通じて、ではなく、彼の本拠地であるcapsuleの中で始まり、起こった、と見たほうが、中田さんに対しても、中田さん個人のファンに対してもフェアなんじゃないか、という気がします。


僕はPerfumeファンではありますが、中田サウンド全体の良き聴き手、というわけではないのでデータを持っておりません。


ということで、ホンノリまことさんのコメントで依頼された検証についてはストレートな形ではお答えできません、ということでご容赦を ▽・w・▽)