日弁連の提唱する「新しい分野」を見る限り、弁護士は増やす必要がない(修正) | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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日弁連Newsという、全会員向けのFAXニュースがときどききます。
最近は、来る3月11日の臨時総会で執行部案を是とすることを前提とした内容のFAXが多い印象ですが、昨日きたFAXの中に、こういうくだりがありました。

日弁連は、司法試験合格者数を、本音では、増加させたいのだろうというのが私の見立てです。
そして、私は、合格者数が増えようがどうしようが、どうだっていいというスタンスでした。
しかし、FAXの下記の部分を見て、考えが変わりました。

司法試験合格者数は、減らすのが合理的だと思います。


理由を以下に述べます。

弁護士は、以下の様な養成プロセスを経て弁護士資格を獲得します。

つまり、弁護士になるまでには、その養成課程に、多大な国費が費やされています(国費の支払先が、修習生の給費(研修所運営コストの部分)か、法科大学院への補助金かの違いこそあれ)。

つまり、この国費を、いかに活かすか、という政策的な要求がそこには生まれます。
意味のないことに国費を費やす必要はないからです。納税者の立場としてはそれは強く思います。

そうすると、上記の表を御覧頂いたらわかるように、弁護士には、
「弁護士がこれらのプロセスを活かせる仕事」
に注力させるのが、もっとも合理的であり、かつ、政策的な要求にも合致するはずです。

一方で、上記FAXの引用部分にある、もしくはそれと関連して日弁連が「拡大」を高らかに謳っている「新しい分野」と
1 インハウスローヤー
2 任期付公務員
3 行政連携活動
4 国際法律業務
5 法律扶助(アウトリーチなどが盛んに挙げられている)

です。
しかしながら、これらのなかには、需要者側が「弁護士資格を持っている人」という要件を定めていることが多いものの、かならずしも「弁護士登録」を要求していないものも含まれています。

これがミソです。

たとえば、「新しい分野」のうち3・4・5(のうち、アウトリーチ)については、「弁護士登録」つまり「ホンモノの登録弁護士」であることは、必ずしも要求されていません。
ということになります。
つまり、これら日弁連が高らかに「新しい分野」と謳っているプラクティス分野のうち3・4・5(のうち、アウトリーチ)は、上記図表にいうところの

「弁護士がこれらのプロセスを活かせる仕事」

に該当しません。言い換えれば、弁護士であることを要求されない仕事であり、もっというと

これらの仕事に弁護士なんて必須ではない


のです。

一方で、インハウスローヤーについては、その業務内容が多岐にわたることから、一概にどうかということは言えないと思います。
ただ、「インハウスに需要があるか」といわれると、確かにあるのですが、この10年で1500人しか聞かないことからそこまで需要があるのか、という疑問、そして、また、インハウス弁護士登録を必要とするのか、という点については疑問が残ります。

司法試験合格者数を無目的に増やしすぎても、結局、こうした弁護士であることを要求されない仕事、弁護士が必須でない仕事に流れるのであれば、何のために税金を突っ込んでいるのかわからず、税金の無駄遣いでしかありません。
高尚な言い方をすれば、「国民の付託」を守っていないこといえます。
もっ といえば、国民は法曹となるために税金を投入することを容認しているのに、そのために使わず、「目的外使用」をしていることになります。

言い換えれば、上記FAXに記載のプラクティス分野をもって「新しい分野」 などと称する日弁連の態度は、税金の「目的外使用」の助長であり、「国民の付託」を裏切る行為である、と考えます。

それなら、合格者数を抑制したうえで、厳選された「弁護士」を「弁護士がこれらのプロセスを活かせる仕事」に集中させるようにしたほうが、理に適っている(国民の付託にも適っている)のではないか、と思うのです。

そのような観点から、日弁連が提唱する「新しい分野」 が上記のようなものであるかぎり、司法試験合格者数は増やす必要がないし、弁護士を増やす必要はない、という結論に落ち着くものと考えられます。