「弁護士」という職業と「弁護士会」は10年後にも存在するのか | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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1 「弁護士」はいつまで存在するか
率直に言うと、私は、「弁護士」という職業は、あと20年後には、存在しなくなる可能性があると考えています。
その受け皿は?という疑問が生じますが、司法書士や行政書士が有力でしょう。
というのは、
①今や、司法試験は、その志願者がこの10年で9割減少しており、改善の兆しがまるでないので、もはや、司法試験よりも、司法書士試験のほうが難易度が高い可能性はあると思います。
②少なくとも、試験としての客観的公正性でいえば、司法試験よりも司法書士試験のほうが 明らかに上です。
 なにしろ司法試験は、「法科大学院」という、内部評価基準のよくわからないところを卒業することが基本的な要件とされているほか、肝心の司法試験が、法科大学院という場を通じて、いともたやすく問題・回答が漏洩する構造であることがはっきりとしましたし、関係者である日弁連や法科大学院協会はこれを抜本的に改善するだけの権限・能力もなければ、利害が絡んでいるせいか、立場的にも難しいことを露呈しています。法務省のスタンスがいまいち見えませんが、現行制度からあまり大きな変更をしたくないようにも見えます。

資格の源泉である資格試験(法曹養成問題)についてこのような状況を放置しておけば、「弁護士」という資格の権威は凋落しますから、弁護士に認められている法律事務の業務独占を認める理由は存在しなくなります。
また、志願者が10年で9割減少しているということは、普通に考えて、優秀な人材が相当に逸走している可能性がうかがえますから、このことにより、お客様の目から見ても、「弁護士って・・・」ということで、信頼を失う可能性が出てくるといえるでしょう。

経済的にみても、弁護士の職域は、浸食される一方であり、これに対して日弁連は有効な対策を一つたりとも打ち出せていないのが実情です。
せいぜい、安売り※することぐらいでしょう。
弁護士が激増すればするほど、「買い手市場」になりますから、より価格は安くなるでしょう。
(※任期付き公務員とか、行政との連携と称して行政側に阿ることくらいしか、目立った対策は見当たりません)
「法テラスにより職域が拡大する」という意見もありますが、弁護士の仕事に対する付加価値の削り取りになるケースも少なくなく、かえって弁護士の経営体力を削ぐ役割を果たしているように感じます。

このような状況の中、「弁護士」が存在するのは、いつまでなのでしょうか。

2 「弁護士会」はいつまで存在するか
 他方、弁護士会という組織は、地方単位会レベルでいえば、あと10年程度で、運営が不可能 になると考えています。
 その理由は、要するに、執行部における理事者を務められる人がいなくなるからです。
 こういうメカニズムです。
①会務への無関心・経済的不可能性
②会務に携わる人の減少・会務経験者の枯渇
③執行部となる人材の払底

 具体的に言うと・・・
 
 これまで、理事者は、イソ弁を雇用して、そのイソ弁に自分の顧問先の業務その他の業務を代行させるということでしのいできたものと思われます。
 が、近年、それをできる人がどれだけいるのか、という問題にぶつかります。
 引き受け手を確保するうえで、有効な対策として考えられるのは、理事者の有償化です。
 しかし、これにも問題があります。
 ア 自分の仕事はストップするわけですから、そのと きは給料がもらえていいかもしれませんが、終わった後、自分の仕事がなくなっている可能性があります。
 イ また、理事者を有償化するということは、会費負担の増大につながるわけで、 会員における会費負担力はすでに限界を超えている可能性があるので、新たな負担増大は困難である可能性もあります
  (ことに、他者の不始末に対する連帯責任制度の導入も検討され始めているうえ、かつ、 福岡のように、会館を建てる予定があったりすると、お金はいくらあっても足りません)。
 よって、理事者の有償化もあまり現実的ではない気がします。

 また、そもそも、理事者は、会の状況に通暁している必要があり、そのために、若手の時から会務に携わる経験が必要だと思います。
 しかし、若手は、自分のスキルアッ プにならない会務なんかに若手は目もくれません(当然のことでしょう)ので、その経験を積む機会もありません。

 このような状況下で、誰かに無理に理事者を押し付けたとしても、会務のことが理解できていないまま携わることになるので、混乱するか、なにもできないかのいずれかに陥ることが必至です。

 これらの事情から、あと10年後には、理事者の人材が枯渇するとみています。
 会の運営がマヒする単位会も出てくると考えます。

 このような観点から、弁護士会がいつまで運営できるのか、という風に、最近の会務を見ていて、強く思うところです。