出身校、危機なんでしょうな。 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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関大ローの危機的な入学者激減・合格率低迷状況からか、関大法学部と関大ロー卒業者向けに、アンケートを送ってきました。
質問は8つありますが、そのうち、質問8(趣旨としては、「どうすれば合格者が増えると思うか」という内容)について、あまりにも書くことが多かったので、別紙にして、パソコンでタイプして添付しました。
その中身を、以下のとおり公開します。
(別紙)Q8に関して
第1 総論
 ローを経由して新司法試験に合格している人の殆どは、ローがあってもなくても合格できる力のある人です。つまりはロー教育が司法試験との関係で無意味に近いということです。多くの学生が同様に感じています(断言)。もっともこれは当ローだけの話ではありません。
 しかし、ローがあってもなくても合格する人だけ合格すればいい、というのであれば、ローはなんのためにあるのでしょうか。
下記の通り、当ローは、学生のニーズを見誤りかつ合格者育成のための方策も見誤っていたというべきでしょう。司法試験合格のためには、学術に深入りすることは禁忌です。旧試験時代、そのようにして泥沼にはまった人がたくさんいましたが、ローは全体的に見てそのようなことをさせていたといえます。
しかるに、ロー発足当初は、「授業についていけないほうが悪い」といわんばかりに、司法試験合格を意識しない、学術真理探究型の授業が繰り返されてきたように思います。それで勘を狂わせ、過った方向の勉強を余儀なくされた人たちの人生を狂わせたともいえるでしょう。発足当初でなにをやっていいかわからなかったという言い訳はできません。授業料に加え、国家から補助金を受け取っているからです。かように、学生の人生を、試行錯誤という名目で狂わせたことは非常に罪深いことだと私は考えております。
したがって、今回のアンケートが、ただローを維持したいがための保身に基づくものであれば、私が時間を割いて協力する必要はないと考えましたが、そうではなく、夢を抱きながら高いお金と貴重な時間を費やしながら散っていった学生に対する鎮魂なり猛省の感情に基づくものであると信じて、協力させていただこうと考えました。
そのような批判をこれまでかわしてきたのだと思われますが、これを甘受することが、改善の第一歩だと考えます(むしろ、このアンケートは、そのための場だと私は理解しております)。
さて、司法試験の合格者数を決める要素は①学生の資質、② 教育内容しかありません。プロ野球で言えば、スカウティングと育成です。

第2 ①に関して~スカウティング
 スカウティングは、こちらからスカウトしに行くものではないので、いかに良い学生に集まってもらうかということしかありません。
 学生の関心は、合格率がどの程度か、その後就職できるのか、この2点しかありません。「どのような高度な先端的教育が受けられるのか」「学術探求ができるか」ということには、一切関心がありません。これまでの当ローは、ここを見誤っていたといえるでしょう。
 そうだとすると、昔の某予備校のスローガンを剽窃させていただきますと
 「合格だけを考えろ」
 というのが、学生のみならず、ロー側としても正しいといえるでしょう。
 結局、良い学生を集めたローが、合格率の高いローになるので、是が非でも、手段を選ばずに、合格率を挙げるしかありません。

第3 ②に関して~育成
 ローの存在意義は、「ほっといても合格する」ランクの人たちのためにあるのではなく、「育成することでやっとモノになる」というランクの人たちにこそあるのではないでしょうか。つまり、ローの存在意義は、ボトムアップにあるといえます。
 このランクの人たちに、いきなり英文のレジュメを渡しても、何の意味もありません。判例をドサッと渡しても、読みどころがわかりません。結局無意味であり紙の無駄です。
そもそも、司法試験に向いていない学習をするようなヒマは、三振制度があることも勘案すると、一切ありません。まして、奨学金債務を負っている彼らに、そのような無駄なことをさせるのは、罪というべきでしょう。
 私が考える、合格者を増加させるための具体的な対策は以下のとおりです。
(1) 司法試験予備校との連携
 その方法としては、ローが直接連携せずとも、エクステンションリードセンターを通じてもよいといえます。ロー講師を招聘するのでもよいでしょう(関学ロー→徳岡先生)。
 基礎的法学教育の分野・知識インプットの分野においては、予備校のノウハウは捨てがたいものがあります。すべてを予備校に頼れと言っているわけではございません。ただ、得がたいノウハウを利用することは重要と考えます。
 (2) 基礎的法学教育過程の充実
 未修をたった1年で何年も旧試験受験生だった既修と合流させるのは無茶だと考えていました。旧試験が無くなった今では、既修と未修の差は当時より縮まったといえるでしょうが、基礎的法学教育課程を充実させることは、合格率の底上げにつながります。
 特に未修者については、(1)の方法にどっぷり漬け込んでもいいと考えます。
 (3) レポート課題の廃止・事案解決形式での論述機会の付与
 司法試験は、時間制限あり・参照は六法のみで行われます。対するレポートは、時間無制限・参照自由、ともすればいかに良い資料を見つけてコピペするかの勝負に堕しているといえるでしょう。しかも、添削が十分になされているわけでもありません。
 私は、司法研修所で、レポートよりもはるかに長い起案を、1クラス70数名分を、たった1週間でビッチリと添削してきたことにも舌を巻きましたが、その後の講評で、全修習生の起案の概要を把握しながら鋭く質問してきたことに、さらに舌を巻きました。レポートというなら、このくらいのことはする義務があるでしょう。ましてローは司法修習前期程度のことをやることが制度設計上予定されていたのです(東大・井上正仁教授は否定していましたが)。
 しかも、レポートのテーマは、単なる論点や判例のほじくりだしであり、司法試験で求められている事案解決というテーマとはまったくかけ離れたものです。もっといえば、ローのレポートは、司法試験の学習において禁忌である「論点主義的学習」のさらに酷いバージョンであり、しかも時間を取るうえ、添削は上記の司法研修所のようになされるのではありませんから、時間の無駄です。今のレベルでやるなら、中止したほうがよいです。
 きちんと、事例形式の問題を作って、あるいは新試験の過去問を使っても良いでしょう(この指導方法は、文科省が最近公式に認めたことは当然ご存知だと思います。もっとも、文科省の顔色がどうだろうと、学生のために、合格に必要なことはやるべきだったと私は強く思いますが・・・)。
 そして、きちんと添削してあげる。
 書くことで力がつくのです。書かなくても力の付く人は、そもそも教える必要のない人ですから、上記にいうボトムアップの対象になりません(稀だと思いますが)。
(4) 定期テストをむやみに厳しくしないこと・補習を行うこと
 定期テストがかなり厳格化されたと聞いています。しかしながら、定期テスト(普段の成績)と司法試験の採点基準が一致しているとは限らないというのが私の印象であり、このような中で、定期テストの採点基準のみをいたずらに厳格化することは、司法試験を受ければ合格する素材をスポイルすることになりかねませんので、やめるべきです。
 もっとも、それでも、単位不認定者が出ることは仕方ないでしょう。これに対し、ローは今まで何らの対策も講じてきませんでした。単位不認定やりっぱなし、です。やむなく単位不認定とする場合には、補習を義務付け、ボトムアップを図ることが、「専門職法科大学院」を名乗るローの責任なのではないでしょうか。

第5 最後に
 もはや当ローの司法試験受験界における位置づけは固定してしまい、志願者にもそのように見られていると思われるので、良い学生を集めるためにローのイメージアップを図るための対策につなげるならば、今回のアンケートは極めて遅きに失した感はあります。
が、それでも、厳しい批判がありうることをものともせず、改善のために動かれた姿勢については、高く評価したいと思います。過ちを改むるに遅すぎることなし、とも言います。このアンケートがローの改善につながり、ひいては、当ローが学生の夢を実現するためのローに変貌することを願ってやみません。
以 上

こんな感じで書いてみました。

個人的には、今の結果になることはわかってたし、自分の合格直後、当時の研究科長だった先生に、この状況を放置していたら5年後にはえらいことになる旨を申し上げたこともありました。
が、伝え聞くところによると、学生のための改革は殆どされないままだったと聞いております。
学校側の抗弁としては、試行錯誤ということが考えられます。
しかし、本文にも書きましたが、学生から学費と、国家から税金を原資とする補助金を取り、かつ「専門職大学院」を名乗っておきながら試行錯誤という抗弁には、何ら理由がありません。もっといえば、プロがそんな言い訳するとは何ごとやねんということです。

上記で「5年後」と書いたのは、以下の理由によります。
ローに教育力がないことはわかっていたので、合格率を決する要素は結局上記本文で言うところの「①スカウティング」の問題だと思っていました。
すると、良い学生をいかに集めるかだけが勝負なので、そのためには、開校後せいぜい5年程度の合格実績で学校の評価・位置づけが定着すると考え、したがって、そこで実績が出ない学校から淘汰されていくだろうと思いました。それが、「5年」の理由です。

あともう一つ気にかかるのは、このアンケートが何のためにされているのかという、動機の問題です。
本文にも書いたように、このアンケートを受け取ったとき、書くべきかどうか少し躊躇しました。それは、
A ただローを維持したいがための保身に基づくもの なのか、
B 夢を抱きながら高いお金と貴重な時間を費やしながら散っていった学生に対する鎮魂なり猛省の感情に基づくもの なのか、いずれかがハッキリしないと感じられたからです。

僕の上記アンケートは、かなり抑えて書きましたが、今回回収されたアンケートの中でも、おそらく、やや厳しい部類に属する内容だと予想されます。
このアンケートが、仮にAの動機に基づいてなされたものだとすれば、ただ激怒されてポイされると思ったので、本来の仕事で多忙な中、いちいち書くまでもないし、書いても用いられないのであれば、ローの行方は見えるので、時間を割いてまで書くのは無意味と判断されるでしょう。
が、Bの動機だとすれば、まだ目は全くないとまでは言い切れないので、わずかの可能性でしょうが、復活の可能性を信じて、そうなってほしいという個人的な願望もゼロではないので、Bの動機である可能性もあるだろうと判断して、書こうと決意しました。

このアンケートを見て、先生方が怒ったり、出禁にされることも覚悟しておりますが、仮にそうなったとしても特段の実害がないので、このアンケートは、勇気を持たずして書いたものです。猪武者かもしれませんが。

今後、どういう因果をたどるのか、遠く福岡の地から、千里山を眺めさせていただきます。