『「多様な司法」実現へ構想を練り直せ 』 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

また、新たなキーワードを出してきましたね。

「多様な司法」ってなんだろう?笑

青を引用部分として、いろいろと突っ込ませて頂きます。

「多様な司法」実現へ構想を練り直せ

日経2012/9/18付

 しかし、司法改革が目指した身近で利用しやすい「多様な司法」はいまだ実現していない。実態に合わせて理念を取り下げるような「合格者数の削減ありき」の議論ではなく、どうすれば本来の司法改革が実現できるかを考え、原点から構想を練り直すべきだ。

→合格者の削減ありきじゃなくて、合格者だけ増やしても弊害ばかり生じ、

 「利用しやすい司法」実現という目的が実現されてないから、方向転換し

 たら?ってだけのことだと思うんですが・・・

 そもそも「合格者の増員まずありき」なのは、日経アサヒさんですよね?


 この10年間に弁護士の数は1万8800人から3万500人へと1.6倍に増えた。司法改革の設計当初に見込んだほど弁護士に対する需要は 広がっておらず、司法修習を終えた時点で2割の人が就職先が決まらないため弁護士登録をしていない。だが、これは仕事がないというより、需給のミスマッチ の問題ではないか。

→需要が広がっていないことを、ようやく認めるにいたりました。この点、

 さすがに事実に眼をつぶることをしなくなった点で、ちっとは進歩した

 んかいな?と思いました。


 ビジネスの現場では、M&A(合併・買収)や資本市場からの資金調達、事業再生などに精通した弁護士が必要な場面が増えている。しかし使い勝手がよく質の高いサービスは十分ではない。

→M&Aや事業再生などについてはその教育がなんにもされていないし、

 そもそも法的マターと言いがたい面も多く(といっても僕はやってます

 が)、弁護士がやるべきところとそうでないところを整理して考える必要

 があります。

 しかるに、この記者は、M&Aや事業再生業務の内実を整理せず、すべ

 てが弁護士マターであるかのように考えているようです。

 要するに、この記者は、これらの業務の実態を何ら理解しないまま、M&

 Aだの事業再生だのと単語だけをそれらしく羅列したものに違いなく、取

 るに足らない話です。

 マトモに取材なり学習なりして書いたものとは思えません。


 「法の支配を社会に行き渡らせる」という理念も実現していない。依然、弁護士は大都市に偏在している。地方でも本来は法的な対処が必要なのにそうなっていない問題は多い。それをすくい上げる努力は尽くされているだろうか。

→M&Aや事業再生やれといったその直後にこれですか。

 弁護士に求めるものが相反しすぎてやしませんか。

 そもそも「地方でも本来は法的な対処が必要なのにそうなっていない」問

 題ってのは具体的に何なんでしょうか。

 そして、その「問題」は、弁護士を増やすことで解決するのでしょうか。

 個人間での1万円のお金の貸し借りの紛争に弁護士が入れとでもいうので

 しょうか(記事に具体的な「問題」が提示されておらず、こちらがわで想定し

 て書く他ありません)。


 いじめ問題などでも、弁護士や弁護士会としてもっとやれることがあるはずだ。実際、学校と連携したスクールローヤーとして、子どもの人権保護などに取り組んでいる地域もある。こうした試みをさらに拡大していくべきだ。

→これはあるかもしれない。人権擁護活動として。ただ、学校側は、警察すら

 拒絶しているわけで、弁護士だって警察だって、要請があって初めて動ける

 受動的な立場にすぎないので、学校側に用いる気がなければ、どうしようも

 ありません。

 受動的な立場であるべきではない、能動的であるべきだ、というのであれば、

 そのような権限を立法により付与してもらわないとなりません。弁護士といえ

 ど、要請もなく勝手に他者が管理する建造物に侵入すれば、建造物侵入罪

 などで捕まりますので。そういうことをこの記者はご存じないのでしょうね。


 人材を育てる法科大学院は、約70校が乱立する状況が改善されていない。地方への適切な配置は考慮すべきだが、もっと統廃合を進める必要がある。多様な人材を確保するため、社会人や法学を学んでこなかった人に対するサポート体制の強化も欠かせない。

→多様な人材を確保しようと思ったら、法科大学院制度を廃止するか、予備試

 験合格者を激増させて、法科大学院を経由しなくても法曹になれる道を整備

 するのが一番いいと思いますよ。

 サポート体制云々というけれど、法科大学院が一番妨害してますやん。


 法科大学院に入ったのに、単年度での合格率は下がり続けて2割台まで落ちている。合格しても仕事がなかなか見つからない。このためさらに志願者が減っていく。この悪循環を断ち切って、若い人が希望を持って目指せる法曹の世界を築かなければならない。

→悪循環の大元は、合格者激増と法科大学院制度でしょう。

 合格率が今よりはるかに悪かった旧司法試験の時代のほうが、志願者が10

 倍くらい多かったわけで、それは、わかりやすいところで言えば収入の高さ、

 少しわかりにくいところで言えば、合格困難というところに対する畏敬に裏打

 ちされた職業的魅力に基づくものでした。

 しかし、法科大学院制度という「参入障壁」と、合格者の激増による就職難に

 よって、これらの職業的魅力は霧消しました。


もう少し、結果と原因をきちんと検証し認知しないと、正しい対策など生まれよ

うもありません。

この記者は、何らかのバイアスがあって記事をかいてらっしゃるんでしょう。


そのとおり進めていこうと別に構わないんですが、タイトルになっている

「多様な司法」(謎)

とやらの実現との関係では、さらなる事態の悪化を招くだけだということに、

ボチボチ気づいたらいいのになと思います。


結局、この記事を通読しても

「多様な司法」

ってなんなのか、全然わかりませんでした(笑)


裁判所を2つか3つの体系に分けて、好きな裁判所を選んでいいよーって

ことなら大歓迎なんですけどね。かつ、過半数を民営にしてくれたら、まさ

に「多様な司法」の実現です。


たぶんこの記者の意図する「多様な司法」というのは、違う意図であり、

きっと「弁護士よおまえらもっといろんな仕事しろ」ってことを意味してい

るのだろうと思われます。


弁護士の世界には、不思議かつ絶妙な需給バランスがあって、それに

よって多様性や弁護士としての「魂」的なものが培われ、受け継がれて

ように思うのですが、それを、よくわかってない学者どもが踏み荒らし、

その中身を理解する能力がないだけのくせしてイジけて「既得権者」だ

の「金太郎飴」だのとレッテルを貼ることによってバランスを狂わせて破

壊しつつある、ということなのだろうと思います。

要するに、記事にするためのネタとしてイジられているにすぎません。


「お前らもっといろんな仕事しろ」

って、M&Aや事業再生もやってますよ。

アウトリーチはせんけど、ボランティア的なこともいっぱいしてますよ。


勝手に「弁護士はこうこうでこれこれしかしない」

というレッテルを貼ってるだけなんじゃないですか。

ちゃんと取材しましたか。どこに取材しましたか。

ぜひ教えてもらいたいものですね。


「多様」である必要があるのは、司法もそうかもしれませんが、新聞こ

そそうじゃないかと思った記事でした。