法律相談センターの危機。 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

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福岡の中心部・天神駅真上の場所にある法律事務所の弁護士です!
日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

(前提として知っていただきたい事実)
1 福岡県弁護士会が運営する法律相談センターが、法テラス福岡事務所と同じビルに所在します。
2 弁護士会の法律相談は、多重債務以外は有料です。
3 弁護士会の法律相談は、相談に入る若手の意見(私の意見も含む)によると、閑古鳥が泣いていることが多い。(ちなみに私は土曜日に別のセンターに出張したのですが、3時間待機して、相談自体がゼロ件でした)

このような中、下記のような通知が弁護士会から出回りました。
・法テラスの法律相談予約が2週間待ちになっている。
・よって同じビルの福岡県弁護士会運営の法律相談センターに相談者を案内したい。
・その際の扱いは、扶助相談(つまり法テラスで受けているのと同じ)。
・日当は、福岡県弁護士会の相談に入る日当(が支払われている)とは別に、法テラスからも日当を出す。

弁護士にすれば、日当が二重にもらえること+相談者にすれば相談予約を待たなくてよいこと、から、一挙両得なように思えます。

しかし、こうなると、弁護士会の法律相談(有料)を利用する人はまったくいなくなるように思われます。
そして、ほぼすべての相談が法テラス経由となる可能性がありえます。
このことによってどうなるか。
弁護士は、法律相談で受けていた事件のほとんどを、要件を満たす限り、すべて法テラスの持ち込み事件
として受けることを余儀なくされる。
法テラスの着手・報酬金は、通常受任の半額程度になることも多く、しかも被告事件だと請求棄却させ
た場合でも低廉な報酬しか出ない。被告事件受任のインセンティブは働きにくくなる。
要するに、激しい価格破壊現象が生じることになる。
と見ています。

法テラスは公的支援+日弁連からの財政的・労力的援助で成り立っています。だからこそ、採算性のな
い業務ができるのです。この点、事務所を借り、事務職員の給与を支払い、自分の生活費を工面し、必
要経費を捻出し、弁護士会費を自腹で支払っている在野の弁護士とはまったく基礎が違います。
マスコミに言わせれば「業務拡大しろ。カネにならないこともやれ。」なんでしょうが、
法テラスと在野の弁護士とでは基礎が違うことを理解していない暴論といわざるをえません。

航空会社でいえば、公的支援を受けているJALが、公的支援によって値下げを表明し、自力で努力して
経営しているANAを圧迫しているのと似ています。マスコミの皆さん、JALが公的支援を受けてから値下げしたとき、散々叩いてたでしょ?

これより法テラスがもっと始末が悪いのは、圧迫対象である弁護士(及び日弁連)からの支援を受けていることです。いわば、A国がB国に経済的支援をしたところ、B国がA国に向けたミサイルを配備しているようなものです(法テラスの場合、実際に至近距離から撃っているわけですが)。

しかし、法テラスとの関係を絶つと、着手金を十分準備できない依頼者の事件を受けるチャンスが減ってしまい、それはそれで辛いところです。
法テラスは、いらんことをせずに、費用の立替だけをやってればいいのに。

大体、費用立替手続時も、なんでこんなことを書かなければならないのかという記載や、重複記載が一杯あって、しかも書類のやりとりのためだけに依頼者に複数回来てもらわなければならず、事務処理が煩瑣にすぎます。いかにもお役所仕事。
これらの業務を、弁護士(事務所)側でやらなくてはならない。書類書類というと、「杓子定規だ」と言われるのは、窓口になっている弁護士なのです。費用の立替に必要なんですよ、法テラスが要求しています、というような説明をせざるを得ない。
また、支払うべき弁護士費用の総額が、法テラスの立替事件の場合と、直接依頼してもらう事件とで違うのも、説明が難儀です。
本当に困った存在です。