修習給費問題。國が、弁護士は個人の資格だし、自由競争していいと認めたようです。 | 向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

向原総合法律事務所/福岡の家電弁護士のブログ

福岡の中心部・天神駅真上の場所にある法律事務所の弁護士です!
日常の法律問題や、弁護士業界のネタ、その他をつらつらと書こうと思います。

司法修習生:無給あんまり 日弁連が対策本部

毎日新聞  2010年4月16日 2時33分(最終更新 4月16日 2時33分)
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100416k00
 国が司法修習生に給与を支給する「給費制」が廃止され、11月から生活資金
を貸し付ける「貸与制」が導入されることに対し、弁護士や修習生から反対の声
が上がっている。司法試験合格までに奨学金を借りている修習生が多く、貸与制
でさらに借金が必要な状態になると、「金持ちしか法律家になれなくなる」との
懸念があるためだ。日本弁護士連合会は15日、給費制の維持を訴えていくため
に緊急対策本部の設置を決めた。【伊藤一郎】

 日弁連が09年に実施したアンケートによると、司法試験合格者の53%が、
法科大学院在学中(2~3年間)に奨学金を利用した。金額は平均約320万円
で、最高は1200万円に達した。

 現在、給与をもらいながら司法修習中の男性(26)は、3年間の法科大学院
生活で600万円の奨学金を借りた。修習生のアルバイトは禁止されており、
「貸与制になって借金を抱えた人が弁護士になれば、返済のために金になる仕事
しかしなくなる」と心配する。

 日弁連は貸与制の問題点を指摘する意見書を公表してきたが、導入反対に向け
た本格的取り組みはなかった。だが、4月に就任した宇都宮健児会長は「会長選
のために全国行脚する中で、法科大学院で多額の負債を抱えた若手弁護士がいか
に多いかを知った」といい、「貸与制になれば負担が増し、貧乏人は法曹の道を
あきらめなければいけなくなる」と指摘する。

 若手弁護士も行動を起こしている。仙台市では今年1月、弁護士や学者ら70
人が市民グループ「市民のための法律家を育てる会」を結成。街頭宣伝や集会で、
貸与制の問題点をアピールしている。

 中心メンバーの渡部容子弁護士(28)は「給費制の廃止は、国が質の高い法
律家を育てる義務を放棄したに等しく、結局は国民が不利益を被る。サービスを
受ける市民の問題であることを理解してほしい」と訴えている。

 司法修習を所管する最高裁は日弁連の方針について、「現在、担当部署で貸与
制開始に向けて準備を進めており、特段のコメントはない」としている。

 ◇ことば 司法修習
 司法試験合格者が1年間、裁判所や検察庁、弁護士事務所で実務研修を行う制
度。裁判所法に基づき、国は月約20万円の給与や通勤手当を修習生に支給して
きたが、法曹資格取得を目指す個人のために公費を支給することを疑問視する声
もあり、04年の法改正で制度改正が決まった。今年11月に修習が始まる新6
4期(新試験組)から給与はなくなり、毎月18万~28万円が貸し出される。
無利子だが、修習終了後5~10年間で返済できない場合は、遅滞利息が生じる。
----------------(引用ここまで)

ふーん。という感じです。
弁護士は、個人のための資格なんですね。

で、自由競争しろと。

ならば、

「はいはい。わかりました。
じゃ、ボランティアでやってる会務※1もしないし、
国選弁護もしませんよ。もうからないし※2。
『弁護士は個人のための資格』らしいので、ボランティアを矯正される理由もないしね。」
って人がゾロゾロ出てきても、責められませんね。

僕は結構会務もやってるつもりだし、国選弁護の受任件数はおそらく単位会でもかなり
上位の方だと思うのですが(当番出動回数はおそらくトップ10には入ると思われます)、
それは、いやしくも修習でお國からお金をいただいたから、その見返りでやってるのだと
思ってます。
同様の考えで会務や国選弁護のようなボランティア活動をしておられる先生は多いと思
います。

・稚拙な自由競争原理を論拠とした増員論
・修習無給(貸与)

この2点だけで、弁護士からボランティア的会務・国選弁護のやる気を失わせるには十
分です。
ただ、そうすると弁護士としての資格の矜恃みたいなものが失われるようで、
弁護士という資格に対する国民の信頼はかなり減殺されるのではないか。と感じます。

弁護士の資格を貶める作戦なんですかね。これって。
誰が考えたのか知りませんが。



もっとも、オマエは修習で給料もらったんだから会務も国選弁護もやれ、と言われたら、
そうですね、といわざるをえませんが。
--------------------
※1 会務…弁護士会にはいろんな委員会があって、例えば「法教育委員会」というのは
        学校に弁護士の講師を派遣したり、教育関係のイベントに協力したりすると
        いった活動をボランティアでやっています。
※2 国選弁護がもうからない…警察署等に被疑者に会いに行く(接見)交通費は自腹で
        すし、コピー代(1枚30円前後)も原則自腹です。しかも被疑者被告人の生活
        上の手間も見なければならないことがあり、裁判やその準備だけに専念でき
        るというものでもないです(そもそも、いちいち警察署等に出向かないといけな
        い時点で手間がかかる。イヤだといってるわけじゃないですが、ただ何か物品
        の授受を行うためだけに警察署等に行かなければならないこともある)。
        もうからない証拠に、年配の先生や景気のいい先生は、国選弁護が好きとか
        使命感とかがない限り、やらないです。
        なお、私の登録地では「こんなエライ先生が!?」という先生でも積極的に国
        選をされていますが、東京大阪で無責任に「自由競争による弁護士増員」論
        をぶちまけてた先生方はやってませんね。
        あ、そうか。自由競争だからやらなくていいって論理なんですね。納得。
        (この脚注だけで一記事書けますねこれ)。
        国選弁護については溜まってるものが一杯あるので、そのうち書きます。