●医師が警告!「3歳までの育て方」ここに注意

2017年11月11日 9時0分

東洋経済オンライン

赤ちゃんがいちばん成長する「3歳まで」の時期、親はどう接すればいいでしょうか
(写真 : 鳥居哲也 / PIXTA)

体とこころを動かす「脳」は、
3歳までに約80%完成する。

「心」が育まれる環境も、
脳がつくられる胎児期の初期から始まり、
3歳ころまでにその基礎がほぼ出来上がる--。

新生児医療に25年以上携わり、小児科医としても多くの子どもたちと接してきた福岡新水巻病院周産期センター長の白川嘉継氏は、

「発育のルール」ともいえるような共通点を実感し、乳幼児の子育てについて
悩み、苦しむ多くの親たちの力になってきた。

長年の経験を基に、「子育ての道しるべ」として刊行した『人生の基盤は妊娠中から3歳までに決まる』は、

親だけでなく教育関係者、助産師、保育関係者など、

子育てにかかわるさまざまな人たちの支持を受け、

9刷3万部を超える「隠れたロングセラー」になっている。

赤ちゃんがいちばん成長する「3歳まで」の時期、

親はどのように接すればいいのか-本記事では「3歳までの育て方」について解説する。

◆赤ちゃんは日に日に成長している

「生まれたときはあんなに小さかったのに、あっという間に大きくなって」とよく言われると思いますが、

生まれてから3歳までの期間、赤ちゃんはどんどん成長して、いろいろなことを覚えていきます。

日に日に変わる赤ちゃんの行動は、今まではよかった接し方がうまくいかなくなるようなこともあると思います。

そのたびに、どのように接していけばいいのか戸惑うことも少なくないでしょう。

でも、その時期その時期の「なぜ、赤ちゃんはこんな行動をするのか」を理解して適切に向き合っていけば、きっといい方向に向かっていくと思います。

では、「3歳までの育て方」として、それぞれの時期にはどのようなことに気をつければいいでしょうか。

さまざまな注意点がありますが、その中からいくつか紹介しましょう。

まず、生後3~5カ月の時期には
「できるだけ赤ちゃんのそばにいてあげること」を心掛けましょう。

「読み語り」は親子一緒に成長できる

【1】生後3~5カ月は「できるだけ赤ちゃんのそばに」

生後間もないころは「聴覚」が最も発達していますが、3カ月に入るころになると
「視覚」がどんどん発達して、聴覚より優位になってきます。

周囲の人もよく見えるようになってきますが、そばにいる親と強い信頼関係を結び始めようとする時期でもあります。

この時期には「いないいないばあ」の遊びがおすすめです。

「いないいない」で親の顔が目の前から消えたあと、「ばあ」で顔を出してあげることで、

「困ったときに、いつでも現れてくれる
存在」ということを学ぶことができます。

また、睡眠のリズムができる時期ですので、

できるだけ夜更かしをさせないように気をつけましょう。

睡眠障害は、行動異常やアレルギー疾患、
肥満などの原因になることもわかってきています。

【2】生後6カ月~1歳は「赤ちゃんにいろいろな表情を見せる」

生後6カ月~1歳は「感覚能力がとても高まる時期」で、
「共感能力」を育むためにはとても重要な
時期です。

人間には、目の前にいる人の言動を脳内で
自分のことのようにシミュレートする
共感細胞と呼ばれる「ミラーニューロン」という神経細胞があります。

「ミラーニューロン」を働かせることで、
赤ちゃんの表情が豊かになっていきます。

初期の「情動の共鳴現象」は、
親から自分の情動が映し返される場面です。

赤ちゃんは、親に自分の情動が
「鏡映化(mirroring)」されることにより、自分の情動を再体験し、自己に対する気づきがさらに深まります。

この「鏡映反応」は、自分の行動と似ているけれど、
同じではなくわずかに違うので、
「自他の区別を明確化していくため」に必要です。

したがって、赤ちゃんは親を通して「自他の区別」と「相手に自分と異なる心があること」を知りはじめます。

また、この時期は
「親が赤ちゃんの表情をまねる」ことも大切です。

「親の表情」を見せることで、赤ちゃんは相手に心があること、自分と他人は違うことに気づき始めます。

親が不安定で、赤ちゃんと顔を合わせようとしないとか、赤ちゃんを怖がらせるような表情や態度ばかりが続くと

「恐怖心」だけが残り、何でもないものや
周りの人を怖がってしまうようになるかもしれないのです。

では、どうすれば「共感能力」を育むことができるのか。

じつは効果的なのが、擬声語や擬態語が多い「絵本の読み語り」です。

「読み語り」を聞いている子どもの脳は、

感情の動きをつかさどる「大脳辺縁系」が
活性化することがわかっています。

また、「読み語り」をしている親も「前頭前野」付近が活発になり、

親の気持ちも落ち着き、イライラせずに子どもと接することができます。

「読み語り」をすることは、
親子のつながりが強くなる有効な方法なのです。

◆子どもの言動を尊重し、認めてあげる

次は、1~2歳の時期です。この時期には、
できるだけ「たくさんの経験」をさせてあげましょう。

【3】1~2歳は「たくさんの経験をさせる」

1歳を過ぎるころになると、
脳の基礎的な神経回路がほぼ出来上がってきます。

記憶が形成されはじめる時期になるので、
多くのコミュニケーションをとって、
たくさんの経験を積み重ねるといいと思います。

また、個人差はありますが、
この時期は立ち上がって歩けるようになるため、
さらにさまざまなものに興味を持ちはじめます。

でも、ここで、「危ないから」といって、
子どもを守るために
なんでも先回りしてガードすることは、

子どもにとってよくない場合があります。

「危ないこと」「危ないもの」を教えることは大切ですが、

親が必要以上にガードして子どもを守ると、

子ども自身が「失敗」できなくなります。

自分で「失敗」を経験することも、
子どもにとっては大切な行動です。

子どもの行動を見守り、助けを求められたら手を差しのべ、

成功したらいいところを褒めてあげると、
子どもはどんどん成長していきます。

2歳ころまでは「助けが必要な時期」ですが、

2歳を過ぎるころからは「支える時期」に
入ってきます。

【4】2~3歳は「ひとりの人間として尊重する」

もちろん、親が子どもを見守っていくのは変わりませんが、

子どもを「ひとりの人間として尊重する」ように接していくと、

子どもは「自分は認められた人間」と思えるようになり「自己尊重」が見られるようになります。

逆に、子どもが何か言おうとしているところを

遮ってしまうと、萎縮して
「自分の意見が言えない子」になってしまうかもしれません。

そんなときは、子どもの気持ちを、できるだけ

言葉で表現させるようにしてみましょう。

自分の気持ちを言葉で伝えようとすると、

「前頭前野」が発達して感情と理性の統合を促し、
「セルフコントロール」と「自己表現」を
学習することができます。

ここでも、「子どもの行動の先回りはしない」ことと

「子どもの言葉を否定せず、きちんと話を聞いてあげる」ことが大切です。

◆3歳までの育て方で、子どもの人生は大きく変わる

子どもの成長とともに、親の接し方も少しずつ変えていくことが必要ですが、

子どもと一緒に親も成長していくので、
「必ずこうしなければならない」ということはありません。

「間違ってしまったかも」「失敗してしまったかも」と思うこともあると思いますが、

「その間違いや失敗に気づく」ことも大きな一歩です。

小児科医として25年以上、多くの子どもたちと接してきて感じるのは、

「3歳までの育て方で、子どもの人生は大きく変わる」ということです。

ぜひ、「3歳までの子どもと上手に接する
コツ」を知り、

親子が笑顔で過ごせる時間を、少しでも増やしてほしいと思います。