東電の安全管理、健康管理がずさんなのは、

つまり、何を表しているかと言えば、

 東電は、原発で今まで放射能漏れの重大な事故を起こしたことがないから、

放射能の怖さを知らないのです。

 だから「まあ、これくらいでも、いいや」、ということになり、

高線量の被曝者を出してしまったのです。

 だから、東電は、「放射能とは、何ぞや」ということを知らないのです。



●甲状腺被曝、最高1万2千ミリシーベルト WHO報告書

【大岩ゆり】

 東京電力福島第一原発事故の復旧作業で、

最高1万1800ミリシーベルトの甲状腺被曝(ひばく)をした作業員がいたことがわかった。

 一般的に甲状腺がんのリスクが増えるとされる 100ミリシーベルトを超えた作業員は

少なくとも178人いた。

 東電はこれまで、

作業員の甲状腺被曝の

詳細を公表しておらず、

世界保健機関(WHO)の求めに応じて報告していた。

 東電はWHOに対し、

作業員のうち、全身の内部被曝線量が比較的高いと考えられ、

甲状腺被曝線量検査を受けた社員や関連企業などの社員522人のデータを、

年齢などの個人情報を除いて提供した。

 近く公表されるWHOの報告書によると、

1万ミリシーベルト超は2人、

1万~2千が10人、

2千~1千が32人、

1千~500が50人、

500~200が69人、

200~100が15人いた。

 全身の場合1万ミリシーベルト超の被曝は

致死的だが、

甲状腺局所の被曝線量は影響が少なく、

急性症状はほとんど起きない。

 東電によると、最高の1万1800ミリシーベルトの被曝は、30代の東電社員。

 全身の外部・内部被曝線量も最高の678.8ミリシーベルトだった。

 健康影響はこれまでみられず、原発以外の部署で働いているという。

 WHOは、年齢のデータが提供されていなかったため、

事故当時20歳と40歳、60歳と想定して、

広島・長崎の原爆のデータなどから、

15年間と生涯で甲状腺がんになるリスクを評価した。

 この結果、

最高の1万1800ミリシーベルトを被曝した作業員が20歳の想定だと、

15年間に甲状腺がんになるリスクは

もともとの0.02%が、

被曝により

0.67%へと33.5倍に増えると予測された。

 生涯では0.21%が3.8%へと17.9倍になった。

 40歳だとすれば、

15年間のリスクは0.05%が0.36%と7.2倍に、

生涯では0.19%が1.1%と5.8倍になるという。

 甲状腺の被曝線量が200ミリシーベルトの場合、

20歳の作業員が35歳までに甲状腺がんになるリスクは

0.03%へと55%増加、

生涯では0.27%へ29%増加すると予測された。

 甲状腺の線量を

公表していない理由について、

東電は

「全身の線量で健康管理している。

 甲状腺は、全身の被曝線量と違い

被曝限度の基準もないため公表しなかった」

と説明する。

 甲状腺の被曝線量の検査を受けた作業員のうち、

関連会社の社員の大半には

まだ結果を通知していないという。

 広島大原爆放射線医科学研究所の細井義夫教授は

「40歳以上でも被曝により

甲状腺がんが増えると示唆する疫学研究がある。

 甲状腺被曝線量が100ミリシーベルト以上の人は、

成人でも継続的な検査が必要だ。

 本人には線量をきちんと通知すべきだ」

と話す。

■東電、ずさんな健康管理

【佐藤純、大岩ゆり】

 東京電力福島第一原発では、

昨年3月の事故後の被曝(ひばく)管理に

問題があったことが

次々と発覚している。

 世界保健機関(WHO)への報告で明らかになった

高線量の甲状腺被曝が起きた事故直後は、

とりわけ深刻な状態だった。

 事故から時間がたち、

作業員への健康管理が

不十分との指摘も出ている。

 東電から経済産業省への報告によると、

全身で最高の678ミリシーベルトの被曝をした男性社員は

昨年3月11日から5月にかけて、

原発構内の中央制御室や1号機付近の屋外などで働いた。

 装着を指示されたマスクが、

放射性ヨウ素を

取り除けないタイプだった。

 眼鏡の上からマスクをしたため、

顔との間にすき間ができ、

放射性物質を体内に取り込んだ。

 しかも、甲状腺被曝を防ぐ安定ヨウ素剤の保管場所は、

この社員がいた場所と離れており、

必要なタイミングで服用できなかった。

 被曝線量の測定もずさんだった。

 東電は、社員だけでなく元請けや下請け作業員にも、

警報付きの電子式個人線量計(APD)を貸し出したが、

昨年3月中は全員にはAPDを持たせていなかった。

 このため、代表者しか持たせてもらえない作業班が続出。

 線量計が1個の班は、

全員が同じ線量を記録された。

 こうした作業員が4割を占める。

 3月に作業した30歳代の男性作業員は

「遠く離れた場所で待機していた人の

低い線量が

自分の線量に

されてしまった。

 自分の正しい線量が

いまだに分からない。

 一部の人だけに甲状腺の検査をやるのは

おかしい」

と首をかしげた。

 甲状腺の被曝線量について、

東電は、関連企業の社員の大半には

まだ通知していない。

 国への届け出義務はなく、

国も東電に対応を任せている。

 東電は全身に50ミリシーベルト以上被曝した作業員は、

甲状腺の超音波検診も無料で受けられる態勢を整えつつあるという。

 ただし、この基準では、

甲状腺に100ミリシーベルトを超えて被曝した作業員を

すべてカバーできるわけではない。

 東電は

「全身被曝の線量から甲状腺被曝線量を推計し、

100ミリシーベルトを超える可能性の高い作業員が検査を受けられるようにしたい」

と話した。

 作業員の被曝に詳しい村田三郎・阪南中央病院副院長は

「全身の被曝線量が5ミリシーベルトでも

甲状腺被曝線量が100ミリシーベルトの可能性もある。

 注意喚起のためにも

甲状腺被曝の実態を公表して、

今後の検診結果もきちんと公にすべきだ」

と指摘する。

     ◇

 〈甲状腺被曝〉

 甲状腺はヨウ素を取り込む性質があるため、

放射性ヨウ素が体内に入ると

甲状腺に集まる。

 全身と甲状腺で同じ1千ミリシーベルトを被曝した場合、

全身の方が、甲状腺より健康影響が大きい。

 甲状腺に100ミリシーベルト以上浴びると

がんが増えるとされるが、

チェルノブイリでは50ミリシーベルトの甲状腺被曝でも

がんのリスクが上がるとの報告があった。

 WHOや国際原子力機関は防護剤を飲む目安を50ミリシーベルトにしている。

(12/01 05:56)

朝日新聞