これがドイツだったら暴動になる。
 
 ドイツだったら、すぐに首相を辞めさせろ、ということになる。
 
 日本では、反対意見が大勢を占めていても、暴動は起きない。
 
 野田首相は、そういうおとなしい日本人の国民性を利用して、
 
自分勝手なことをしているのではないか。
 
 
 
●「天声人語」
 
6月17日 01:12
 
占領時代に別れを告げる講和条約が結ばれた1951(昭和26)年、
 
「逆コース」という言葉が流行語になった。
 
 東西冷戦を背景に、なし崩し的に再軍備が進められ、
 
復古調の空気が世間に流布した。
 
 言葉には、「この道はいつか来た道」の意味合いがあったという。
 
▼時代も、起きている事も異なるが、
 
大飯原発の再稼働に、古い言葉が思い浮かぶ。
 
 歌舞伎の舞台を見るような型通りの儀式をこなして、
 
政府はきのう「最終判断」を下した。
 
▼つまり「安全神話」への逆コースに他ならない。
 
 都合の悪いことは知らんぷりで、
 
体裁の整う事柄だけを
 
甘くつないで
 
「安全」をうたう。
 
 うそで化粧してきた産官学とは違い、
 
だまされた側は忘れようもない。
 
▼繰り返しになるが、
 
原発を知らなかったこと、
知ろうとしなかったことを、
 
大勢の人が誠実に悔いている。
 
 その上での
 
脱原発依存の潮流を、
 
「精神論」だと
 
野田首相が言うのも
 
いただけない。
 
 政と官の本性が、言葉の端からのぞいていないか。
 
▼「喧嘩(けんか)は片方にしか非がなければ長く続かない」という。
 
 喧嘩ではないが、国論を二分するようなテーマは
 
双方に是と非が相混じるものだ。
 
 だが原発の場合、
 
将来には無くす方向でおおむね意見は一致する。
 
 その中長期ビジョンさえ
 
示さないままの
 
再稼働は、
 
国民への誠実を欠く。
 
▼とにかく、なし崩しは許されない。
 
 安全を言い張る稼働こそが、むしろ精神論だろう。
 
 それは自信から過信に姿を変えて、
 
遠からず「いつか来た道」をたどり始める。
 
■朝日新聞社