●電力会社の利益、7割が家庭から

 際立つ割高感

5月23日 05:14

 経済産業省が全国10電力会社の電力販売による収益を調べたところ、

家庭向け電力が販売量の約4割しかないのに、

利益の約7割を占めていることがわかった。

 一方、販売量の約6割を占める企業向けは、

利益の約3割しかなかった。

 企業向けに比べ、

家庭向けが割高になっているからだ。

 経産省は10電力の2006~10年度の販売電力量、電気事業による売上高と利益を調べた。

 5年間平均では、販売電力量は家庭向けが38%、
工場など企業向けが62%で、

売上高はそれぞれ49%(7兆2千億円)、

51%(7兆5600億円)だった。

 一方、利益は家庭向けが69%(4300億円)、

企業向けが31%(2千億円)と逆転した。

 各電力会社では、東京電力で家庭向けが利益の 91%を占めた。

 07年の新潟県中越沖地震で原発が止まって天然ガスなどの燃料費がかさみ、

利幅の小さな企業向けの利益が少なくなったからだ。

 沖縄電力は家庭向けの販売電力が多いため、

利益でも90%を占めた。

関西電力も65%、

中部電力と九州電力も59%と高かった。

 家庭向けの電気料金は、
発電にかかる費用を積み上げ、

さらに一定のもうけを上乗せする

「総括原価方式」で決まる。

 また、その地域の電力会社からしか買えない

「地域独占」のため、

電力会社どうしの値下げ競争もない。

 このため、電力会社は安定して利益を上げる土台にしている。

 一方、企業向け電力は自由化されており、

電気料金は電力会社と企業の交渉で決められる。

 新しく参入してきた

「新電力」の会社との競争もあるため、

電力会社は利益分を少なくして

割安な料金にしている。

 電力会社が家庭向けと企業向けでどのくらいの利益を得ているかは、

これまではっきりしなかった。

 政府の「東電に関する経営・財務調査委員会」は

昨年10月にまとめた報告書で、

東電の家庭向けからの利益の割合が91%であることを初めて公表した。

 他の電力会社でも家庭向けの利益が大きいため、

今後は利用者から家庭向け電気料金の値下げや、

家庭向け電力の自由化を急ぐよう求める声が高まる可能性がある。

■朝日新聞社