黒くて手強いやつ
私は幼い頃から虫に好かれやすいようだ。嫌いな人のところにやってくるというが、
本当によくお目にかかる。特に天敵ごきぶりに。
厚木で一人暮らしをしていた時も、台所の上の棚を開けたら私の肩に飛び落ちてきて
悲鳴を上げたことがある。
アトランタにいた頃、借りて住んでいた知り合いのコンドミニアムでも現れた。
持ち主はナースで、あまり自炊をしない感じの人だったが、その部屋にはいたのだ。
夜行性であるごきぶりは、たいてい私が寝支度をする頃に姿を見せる。
ある時は洗面所に、ある時は床に、ある時はキッチンの台の上に。
まさかベッドにやって来ないのはわかっているけれど、やはり一度見つけてしまったからには、放っておく訳にはいかない。
スプレーで襲撃。その後、ホウ酸団子を部屋中に置いて、なんとか退治した。
ジュバでも、私の部屋の洗面所に現れました。しかも毎晩たいてい同じ場所に。
要するに、そこに住んでいるんだろうね。
さすが途上国にいれば、私だってぎゃーぎゃー騒がないさ。私に危害を加えない限り。
が、ある時私がシャワーを浴びていると、壁からひょっと落ちてきたのだ。
一日の土埃と汗を流しているそんな時に邪魔されたらさすがに黙ってはいられません。
泡の残り髪の毛を振りかざし、とりあえず、雑誌を片手に闘いが始まりました。
賢いもので、なかなか叩けないような隅っこばかりに行ってしまうので、虫よけスプレーをかけてみる。もちろん蚊くらいしかに効かないものなので、ダメージは低い。
さんざん追いかけまわすが、あとちょっとのところで逃げられてしまう。
毎晩こんな闘いをしては引き分けになるのは嫌だ。
お手伝いの女性にごきぶりのことを告げると、隠れていそうな場所をチョークで囲うといいと聞いた。
試してみたところ、翌日にはひっくり返って死んでいるごきぶりを1匹見つけた。
更にその翌日、もう1匹、洗面所でひっくり返ってバタバタしているのを見つけた。
これもチョークの効果だろうか。
弱まっている彼にも、いなくなってもらうことにし、水を勢いよくかけて流した。
これで、とりあえず退治はできたはず。
日本のごきぶりは耐性ができて強そうだけれど、チョークは結構効くかもしれない。
少なくてもホウ酸団子よりは。それにしても私の前によく姿を現す黒くて手強いやつ。
向こうが姿を現すのか、私が彼らの気配を感じて見つけてしまうのか。どうも後者のような気がしてならないのだが。