建築構造演習 第3講-1 | だから構造家は、楽しい

建築構造演習 第3講-1

早くも3回目の授業。一週間が早いです。

今回も、4名出席で、出席率200%。


今回のテーマは

床と梁


つまり、曲げ系の部材。


一番最初に、

必ず覚えるべき公式、として

等分布荷重の単純張りの曲げモーメントとたわみの公式

M = 1/8・w・L^2

δ = 5・w・L^4/(384・E・I)

を書いたプリントを配布。


とにかく、こいつは覚えなさい。あとI=1/12bd^3も。

きっといいことあるから、と、まず最初に説明。


あとは、ひたすら、この式の中身について解説。


前半は、たわみについて。

たまたま教室内に、ビデオデッキやDVDプレーヤーなどを置いたスチールラック(4本のアングル製の足に、t=2.3mmの鉄板で構成)がおいてあったので、それを例に説明。


講師:もし、この鉄板が同じ厚み(薄さ)の木製の板だったら、ラックとして役に立つと思うか?


生徒全員:NO


その通り。

鉄から木に変ると、Eが激減する(1/20~1/25くらいになる)から、たわみがぐんと増える(20~25倍になる)ということ。


講師:では、木の板でやる場合、どうするとよいか?


生徒A:板を厚くすれば良い。


その通り。


板を厚くすると、断面2次モーメントI(=1/12×bd^3)が上昇する。(dが厚みに相当)

3の3乗が27だから、だいたい3倍厚くしておけば、問題ない、ということになる。


つまり、ラックのサイズ(スパンL)や載せるモノの重さ(w)が決まっているなら、

ラックの天板を構造設計するということは、材料(E)を決めたり、厚み(結果としてのI)を決めることなのだ、

ということをこの公式が示しているのだよ、と説明。


こういう公式は、必ず自分自身の感覚とセットで覚えてください。

公式に登場する変数(w、L、E、I)を覚える、というのは、何が変わるとたわみが増えたり減ったりしうるのかを自覚する、ということである、ということ。そして、どの変数が分子でどの変数が分母であるかについては、仮に忘れてしまっても”感覚”で分かるハズ。


もし、板を厚くすることと板が固くなることが結びつかないというようであれば、それは、もう感覚が麻痺しているということなので、あきらめてよいです。


スパンの3乗に比例するのか4乗に比例するのかが、なかなか覚えられない、ということであれば、そこは頑張って覚えてください。

ただし、単位を意識する習慣がついていれば、間違いようがないので、そのことについては丁寧に解説。

I=1/12×bd^3

だからIが長さの4乗であることもすぐに思い出せるし、wやLは感覚からすぐわかることなので、

Eの単位が(力/長さの2乗)ということを記憶あるいは自覚しておけば、それですぐに単位の整合がとれ、公式の中に登場するのがLの3乗だったか4乗だったかは整合がつきます。


となると、残った5/384という数字だけが真に覚えるべきポイント。

こいつを導くにはきちんと平面保持の仮定を理解して積分計算をすればよいだけのことだけれど、工学部の学生でないし、それはできなくても良いです。とりあえず、僕の授業ではそこに時間を割く予定はありません。


ようするに、覚えておくべきは赤字のところだけです。

ひととおり、この公式について理解ができたところで、

w×L=Pの集中荷重をスパン中央に作用させた場合のたわみが

δ = P・L^3/(48・E・I)

と板書。

それに続けて、分子と分母を8倍して、

= 8・P・L^3/(384・E・I)

w×L=Pなのだから、結局、

= 8・w・L^4/(384・E・I)

ということを説明。

ようするに、等分布荷重に比べて、1.6倍に増えるということ。

つまり、全体にばら撒かれていた荷重を中央一箇所に集めた方がたくさん変形する、ということ。

ここでも、感覚、が大事です。柱などの支点に近いところに立つか、スパンの真ん中に立つかでどっちが変形するかどうかが分かっていれば、このことは理解できるはず。そして、それは高々1.6倍で2倍もいかない、ということ。


逆の言い方をすれば、最初の当分布荷重の式を覚えておけば、集中荷重の式は、それを1.6倍すればよいだけ。


単純梁と両端固定の梁については、単純梁に比べて、相対的にどれだけたわみが小さくなるか、ということ。

完全固定となると5/384→1/384となり、一気に1/5になる。

世の中の全ての事柄は、単純梁(端部完全ピン)と両端固定梁の間にあるから、

まずは、単純梁の公式を覚えてしまって、あとは、どうすれば、梁端部の固定度をあげるかを工夫すれば良いとだけ説明。

(それ以上の説明が欲しければ、自習の上、何がわからないかを自覚してから質問に来てください。)


これだけのことを教えるのに85分。ちょっと丁寧すぎたかな。