輪の家
先週末の土日に、
設計者(TNA/武井誠+鍋島千恵)と構造設計者(ASA/鈴木啓)それぞれから案内いただいていたオープンハウスに行ってきました。
軽井沢の建売別荘。
それはまぁ気持ちのよい別荘でした。
部屋の中にいる以上に、森の中にいるという実感がありました。
外観です。
リビングチェアに座った際の視線です。
リビングチェアに座る子供たち。
トラス階段
キッチン。
森を眺めながらの調理は気持ちよさそうですね。
この抜けっぷりは、尋常じゃありません。
間違いなく今年の話題作です。(少なくとも僕の中では)
一般論として、給排水や電気・空調用のダクト類・ユニットなど、
『建築として必要なれどデザイン的にあまりうれしくないモノたち』
をいかにデザインするか(もしくはいかにデザインの中に隠蔽するか)
という問題は、
建築設計をやっていく上で永遠の課題なのかもしれませんが、
この建物では、かなり高度に成功していると感じました。
その徹底っぷり(というよりもむしろ武井クン固有の繊細さ)には脱帽です。
そして、何よりも、森の中にいるんだという実感を与えることに成功しているところに、この建物の良さを感じます。
構造もまた、実に原理に忠実であり、それでいながら、一つ上の世界に到達している素晴らしい作品だと思いました。
構造壁の全く無い木造住宅。
柱の外側に厚板をボルトで接合。
厚板にそれなりの「せい」があり、梁として高い剛性が出るので、ラーメン構造が成立します。
せいの高さからすれば、破壊モードは、柱の曲げ破壊もしくは接合ボルトによる柱へのめり込み破壊ではないかと推察されます。
(このあたりの細かいことは、明日の夜に鈴木さんと会うよていなのでその時にでも聞こうかな。)
柱の曲げ強度の問題なのであれば、材の選択については、ひとえに「強度勝負」となります。
高強度の材を取り揃えている、中国木材の構造用集成材を用いているそうです。
最下階の柱脚についても非常にうまく解けていました。
一般的手法に基づき土台の上に載せると、ピン柱脚となります。
柱の曲げモーメントを一定値以下に保つには、柱高さを柱脚剛接の場合の半分にしなくてはなりません。
それではこの建築の良さが半減してしまうので、1階(地階?)RC壁の内側に抱かせることで、面内方向を埋め込み扱いとして剛接化し、1番下のガラス高さを確保しています。
結果論なのかもしれませんが、建物の水平剛性を発揮させるための板部材がRCであれ木であれ柱の外側に取り付くという共通化を果たしているわけで、そのアイデアが出た時点で、「解けた!勝負アリ!」みたいな感じになったのではないかと思います。
意匠と構造がうまくマッチしている建物というのは、僕が構造家として常に目指しているものであり、それが見事に実現されている様には、建築家・構造家の双方にただただ敬意を表するばかりです。