第3話 空の彼方にⅢ | 笑顔とありがとうを~大切な人たちへ~

第3話 空の彼方にⅢ





午前中はいつも通りだった。


今までと変わることなく


静かに寝息を立てていた。


そしてそれは変わることなく続くと


妹と私は思っていた。













「なんだかお母さんの呼吸の感じおかしくない?」





それは微妙な変化だったのだが


いつもの母の呼吸の仕方と違う気がして


妹にそう尋ねた。





「えっ?!そう?」




そう言って妹は母の顔をまじまじと眺めた。






「微妙な感じだけど・・・・何か苦しそうじゃない?」




「ん~・・・」




妹にはその変化がまだわからないらしい。






「気のせいかもしれないけど・・・顎で呼吸してる感じしない?」




「・・・・なんか言われて見ればそうかもしれない・・・・」




「もう少し様子見てみる?


それかもうすぐ看護師さん来る時間だから


その時に聞いてみようか。」




「そうだね・・・そうしようよ」










そうして30分程過ぎた時に


看護師さんが病室に入ってきた。


その時の母の呼吸は


先程よりさらに浅く速くなってきていた。


明らかにいつもとは違う。








「母の呼吸がおかしいんです。


すごく浅い呼吸になってきて苦しそうなんです。」









看護師さんが来るなり


早口で母の様子を伝えた。






「どれくらい前からそうなりました?」





「30分程前に少し苦しそうな呼吸をし始めて


今はそれよりもっと苦しそうです。」




私の答えを聞きながら


看護師さんは素早く脈拍と血圧を測り


聴診器で胸の音を聞き始めた。




「ちょっと待っててもらえますか?」




「え?」





「少しいつもと違う感じなので先生に見てもらいましょう」





いつも落ち着きをはらっている看護師さんの口調が


今日は焦っているように感じた。









やはりいつもと違うんだ!


母の体に変化が起こっているんだ!


どうしよう・・・・どうしよう・・・・


お父さんもまだ来てないのに・・・


何かあったらどうしよう・・・・











咄嗟に頭の中で色んな感情が渦巻き始めた。


妹も同じ気持ちなのか


黙ったままだ。







先生が来るまでの間


妹と私は言葉を交わすことなく


母をずっと見つめていた。






相変わらず母の呼吸は浅く速い。


そして頻繁に顎を動かしながら呼吸している。


おかしい、明らかにおかしい。


どうしよう!どうしよう!





変に気持ちだけが焦り


先生が来るまでの間が


異様に長く感じられた。