【第6章】 第1話 新しいスタート
病院に救急車が到着すると
入り口には看護師さん数人が待っていた。
救急隊員と共に病室まで入り
看護師さんと救急隊員は母の様態に関する連絡事項を話している。
妹と父はまだ到着していない。
救急隊員が引き上げてしばらくしてから
ふと気がついた。
母の今度の病室は個室だ。
今までは3人部屋しか入ったことがなかったが
今回は個室。
たまたま空いていたのか
それとも別の意味があるのか・・・
それはわからない。
一通りの準備が整い看護師さんたちも引き上げた頃に
父と妹そして私の次男がやってきた。
「わぁ~個室ってこんな風になってるんだぁ~」
それがわざとなのか妹は殊更明るくそう言った。
「すごいきれいだよね。」
「本当!本当!お母さんよかったじゃん!
こんなきれいな部屋で!」
「そうね~」
母も心なしか嬉しそうにはにかんだ。
その日は看護師さんに頼んで
私と妹と私の次男は
母の部屋に泊まることにした。
これからまた付き添いの日々が始まる。
それが長く続くのか、すぐに終わってしまうのか
神様にしかわからない。
私達はただ目の前に横たわる母と共に
その日々を大切に大切に過ごすこと。
父と母と私と妹、4人家族。
その家族の時間を大切に過ごすことしかできない。
たったそれしか出来ないけれど
それが何より大切で愛しおしいものと思えた。