第15話 母の願い 家族の願い | 笑顔とありがとうを~大切な人たちへ~

第15話 母の願い 家族の願い

「お姉ちゃん・・・お母さん見ててどう思う?」



部屋に入るなり妹は私に聞いた。



「うん・・少しずつだけど悪くなってきてる感じだね・・・」



「そう思うよね。」





今までずっと母を見てきた私と妹。

だからこそ少しの変化でもすぐに気がつくし

その変化が重大なものかもわかるつもりだ。

息が苦しい。

そのことは以前にも何度か言っていた母だったが

それがこの頃は頻繁に言うようになってきた。






「緩和のAさん(担当看護師)がね言ってたんだけど

息が苦しくなってきたら病院に戻った方がいいって・・・言ってたんだ・・・」




「今はまだ大丈夫な状態なのかな?もう戻った方がいい状態なのかな?」







そう妹に聞かれても

私が答えられる筈なんてなかった。

苦しそうにしている時もあれば

穏やかに過ごしている時もある。

その割合が少し変化してきただけで

これが病院に戻る状態なのかどうかは判断できない。







「正直言って私にもわからないよ・・」





「ただ・・・少しでも長く家に居させてあげたいと思う・・・」








家に居させてあげたい。

家に居てほしい。

それは母の願いでもあり

私の願いでもあった。

だが一方でこのまま母を家に置いて

いたずらに苦しみだけを背負わせるのは嫌だった。

その気持ちは妹も同じだろう。




「一度病院に電話してみようか・・・」



「そうだね・・・」



今の私達には

その方法しか思いつかなかった。