第4話 手術
父と電話で話をして次の日に手術は行われた。
その間私は家で父の無事を祈るしかなかった。
「手術時間は大体12~3時間位だって」
付き添っている妹に電話でそう聞いた。
朝の9時頃に開始すると聞いたので、夜になったら連絡が来るだろうと思っていた。
何をするにでも落ち着かず、意識はずっと電話へいっていた。
夜になり子供を寝かしつけて、電話が鳴るのをひたすら待っていた。
でもその日は結局連絡は来なかった。
次の日の朝早く起きて、電話の着信履歴を調べても
どこからも電話が来てはいなかった。
だんだん不安になってきた。
どうして何も連絡無いのだろうか・・・?何かあったのかな・・・?
待って待って待ちくたびれたお昼ごろにやっと連絡が来た。
「もしもし?おねえちゃん?」
「もしもし!どうしたの?連絡来ないから何かあったのかと・・・・」
「ごめんね連絡おくれて。お父さんの手術結局終わったのが明け方で20時間近くかかったんだ」
「20時間??そんなに大変な手術だったの?」
「大変だったみたい・・・・詳しいことはまだわからないんだけど、残せるかもって言ってた
声帯もやっぱり残せなくて・・・癌もかなり広がっていたみたいで、たくさんとったんだって」
「・・・・・」
手術の前に先生からの説明では
もしかしたら声帯は残せる可能性があるかも、と言われていて
私たち家族はその望みに賭けていました。
でも、結局はその望みさえも叶うことなく
父は声帯を失い、言葉を失いました。
妹との電話を切り、私はただただ呆然とするばかり・・・
その日一日はなにもする気になれなく
子供の相手もせずに沈み込んでいました。
あと何日か後には出産も控えているのに
新しい家族が増える喜ばしい日がやってくるのに
楽しい気持ちにはどうしてもなれませんでした。