全智賢の姿を見たくなって「四人の食卓」をまた見た。この作品は良くできている。感想は、以前このblogに書いたとおり で変わりはない。

改めて見て、全智賢の女優ぶりがとても好ましかった。演技がうまい。暗くて地味な役。不気味で怖い主婦をほとんどノーメイクで演じる。インタビューでもすごく難しかった、と言っているほど。

顔のアップでは額にある傷もわかるくらいの素顔。生々しく全智賢の肉体を感じることができる。マニア必見です。

いいシーンがいろいろある。今回特に印象に残ったところ。主人公の男が、いろいろないきさつがあって全智賢とつき合っているのではないか、と疑いを持たれる。男の婚約者が、二人で寄り添って(いるように見える)ところを目撃するのだ。

男と婚約者が車の中で話し始める。婚約者は男に説明を求めない。男にはもっと恐ろしい出来事があって、誤解を持たれるどころの状況ではない。婚約者の抱く不審は男の抱えた問題と比べたら些細なことなのに。。。説明できないもどかしさ。誤解を解けないまま婚約者は車を降り、去っていく。

この場面で婚約者が語るエピソードがとてもいい。誰もこの映画を見ないだろうし、俺も忘れてしまうかも知れないので書き留めておく。こんな話しだ。

ある村で日照りが続き、このままでは村の作物や飲み水にも事欠く状況になった。村人は教会に集まって雨を降らせてもらうように神に祈ることにした。信じて祈れば雨は降るはずだ。大勢の村人たちが何日も祈り続けやがてその祈り会は終わった。帰り道に祈ったとおり雨が降った。終わり。

聞いている男が、つまらない話しだな、と言う。俺もそう思った。

婚約者は続ける。「そうよ。これで終わり。つまらない話。でも帰り道、雨が降ってきたのに傘を持って来たのは小さな男の子一人だけ。その子は、祈ったら雨が降るから傘を持って行かなくちゃ、と言って家を出たの」。

婚約者が話を終えると映画の中でも雨が降りはじめる。渋滞した男の車から婚約者は降りる。鞄から折りたたみの傘を出して。

映画らしい、いい場面だ。傘の伏線は映画の初めの方に張ってある。小物の活用例として巧妙だ。映画の主題とはあまり関係ないのだが、この場面だけで完結していていいな、と思った。

全智賢、姿が美しいなあ。顔は丸く、顎が短くてアジアの顔だ。そこがいい。手足が長くスレンダー。見とれてしまう。